文字 

いきいき健康 糖尿病―日常生活の留意点 フットケアや感染症予防

岡邉和恵看護師

 川崎医大川崎病院(岡山市北区中山下)で、患者や一般市民を対象に「糖尿病教室」が開かれている。講師の一人、同病院内科外来の看護師(糖尿病療養指導士)岡邉和恵さんに糖尿病に関する日常生活の留意点について聞いた。

 厚生労働省2007年国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる人が約890万人、糖尿病の可能性が否定できない人は約1320万人と推定された。合計で約2210万人となり、国民病の様相を呈している。

 高血糖状態が長く続くと合併症の危険性が高まる。細い血管(細小血管)の病気である網膜症、腎症、神経障害のほか、太い血管(大血管)の病気である動脈硬化による脳卒中や心筋梗塞、また感染症も起こる。

 合併症は糖尿病の診断がつく前から進行している。「中でも神経障害は一番起きやすいですね」と岡邉さん。「まず毎日足の裏まで観察する習慣をつけましょう」とフットケア(足の手入れ)について説明する。

 神経障害が起きると足の小さな傷や、やけど、靴擦れに気がつかなくなる。また糖尿病では足指の形が変わったり、たこ、まき爪、水虫、乾燥、ひび割れなどが起きて重症化しやすい。そこで、入浴時に指の間から足裏まで観察し、丁寧に洗う。傷などを本人以外の第三者が見つけやすいよう薄い色の靴下をはく。深爪をしない。保湿クリームを使い、ひび割れをつくらない。水虫は治療する。うおのめ、いぼは病院で治療する。けがをしたら消毒し応急手当をする。

 靴を選ぶときは足の甲を圧迫せず、つま先に余裕があるものを選ぶ。ハイヒール、サンダル、草履は長時間履かない。冬場、懐炉やこたつのヒーターは直接皮膚に当てない。これらがフットケアの方法だ。

 また岡邉さんは「日頃から感染症予防に心掛けて」と注意を促す。糖尿病患者は歯周病、風邪、気管支炎、肺炎、膀胱(ぼうこう)炎、腎盂(じんう)腎炎などの感染症が起きやすい。そこで、帰宅したら手洗い・うがい。皮膚を毎日観察する。入浴し身体を清潔に保ち、入浴できないときでも手と足は洗う。歯磨きをする。歯科を受診する。適切な水分補給。こうした生活習慣が大事で、岡邉さんは「おかしいなと思ったら早めに病院へ」と助言する。

 飲酒は、いったん飲み出すと止まらない人はきっぱり禁酒。医師の許可があれば少量の飲酒は可能だが、毎日は飲まない。休肝日を週2回は作る。1日に160キロカロリー(ビールなら400ミリリットル程度)を超えない。炭水化物を含む食事と一緒に飲むことを勧める。

 旅行では、インスリン注射をしている患者が飛行機に乗る際、インスリンは高温・凍結厳禁のため必ず手荷物として機内に持ち込むようにする。

 岡邉さんは「糖尿病では食事、運動、薬物療法は重要ですが、日常生活に気を付け自分で自分を守ることも大事」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年01月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ