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(6)「気胸」ってどんな病気? 岡山赤十字病院呼吸器外科医長 野田奈緒子

野田奈緒子氏

 ■気胸とは

 「気胸」とは肺に穴が開き、胸の中(胸腔(きょうくう))に空気が漏れ、肺がしぼんだ状態のことを言います=図1。症状としては、胸が痛くなったり、肺がある程度までしぼんてくると息苦しさを感じたりします。

 気胸には大きく分けて「自然気胸」と「外傷性気胸」があり、「外傷性気胸」は胸を打撲して生じた肋骨(ろっこつ)骨折により肺の表面に傷がついて起こることが多く、「自然気胸」は外的要因を伴いません。「自然気胸」は肺の表面の風船状の病変(ブラと呼びます)に穴が開いて、肺から空気漏れを起こす「原発性自然気胸」と、肺気腫や間質性肺炎など肺の持病がある人に生じる「続発性自然気胸」に分けられます。「原発性自然気胸」は10~30代の痩せ型の男性に多く、「続発性自然気胸」は主に喫煙歴のある高齢者に起こります。当院は「気胸センター」を有しており、呼吸器外科と呼吸器内科がスムーズに連携できる体制で気胸の患者さんの診療に取り組んでいます。

 ■気胸にはどういう対応をするの?

 気胸に対する初期治療は主に「肺のしぼみ具合」によって決まります=図2。I度(軽度)であれば安静にして経過観察、II度(中等度)またはIII度(高度)であれば「胸腔ドレナージ」が選択されることが多いです。「胸腔ドレナージ」とは、胸腔内にチューブを留置し、漏れた空気を持続的に脱気することで、しぼんだ肺を膨らませる治療であり、入院を要します=図3。「胸腔ドレナージ」を行っても、肺の空気漏れが止まらない場合には、患者さんの病状に応じて外科手術や内科的治療が選択されます。

 最近は、II度やIII度の気胸であっても、症状が落ち着いていれば、チューブを留置せずに外来で経過をみる試みが海外から報告されています。当院でもII度の原発性自然気胸で、症状が落ち着いている方は、穿刺(せんし)脱気(だっき)(胸に針を刺して、一時的に空気を抜く方法)を行い、外来で経過をみることもあります。

 ■どんな場合に手術になるの?

 肺からの空気漏れが止まらない場合や出血を伴う場合、左右同時に気胸を発症した場合には、手術が必要です。また、原発性自然気胸の場合、初めて気胸を発症された方の約4割、2度目で約6割の方が再発するため、再発率を下げる目的で手術を行うこともあります。手術後の再発率は1割程度です。手術では、空気漏れを起こしているブラを切除したり、ブラの根元を糸で結紮(けっさつ)したり、肺の表面を人工シートで補強したりします。胸腔鏡を用いて手術を行うので、小さな傷で、痛みも少なく、ほとんどの方が、手術後2日目に退院されます。

 自然気胸は男性に多い病気ですが、胸部子宮内膜症関連気胸など女性特有の自然気胸もありますので、胸の痛みや息苦しさなど気胸を疑う症状でお困りの際は、どなたでもお気軽にご相談いただければと思います。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 のだ・なおこ 東海大学医学部卒。東海大学医学部付属病院、神奈川県立がんセンター、福岡大学病院などを経て2021年から岡山赤十字病院勤務。日本外科学会専門医、日本呼吸器外科学会専門医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年10月02日 更新)

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