文字 

心肺蘇生処置者の心をケア 岡山市消防局がカード

岡山市消防局が心肺蘇生処置を行った市民に手渡しているカード

 岡山市消防局が、救急現場に居合わせた人(バイスタンダー)に相談電話番号を記したカードを手渡している。救急車到着までに市民が心肺蘇生処置をしても助からなかった場合などに感じる心的負担を和らげるため。カードには感謝の言葉も書き込んでいる。取り組みを始めてから2年余りで約260枚を配り、心のケアに当たっている。

 「肋骨(ろっこつ)が折れる感触がした。自分の処置方法が間違っていたのではないか」

 高齢者に心臓マッサージをした女性は、懸命に処置したが助けられなかった自分を責め、約1週間後に電話をかけた。

 消防局の担当職員は「骨が弱い場合に折れるケースがあり、折れても血液を循環させるためにマッサージを続ける必要があった」と処置の正当性を説明。女性は納得し、以後相談はなくなった。

 別の女性は、会社で倒れた同僚に心臓マッサージを行い蘇生させたが、上司からAED(自動体外式除細動器)を使うべきだったと言われ、ショックを受けた。電話はかけなかったが、救命講習に出席した際に相談し、消防局の救急救命士は「最善の処置をしてくれた」と声をかけた。

 救急現場で隊員は救命処置や搬送に追われ、バイスタンダーへの対応が不十分になりがちだったため、消防局は2011年1月から、カードの配布と相談を始めた。

 表面は「勇気を持って応急手当にあたっていただき、ありがとうございました」のメッセージ。裏面は相談電話番号を記している。救急車の到着までに心肺蘇生を試みた市民に救急隊員が手渡している。

 相談は救急課職員が平日午前8時半から午後5時まで応じる。それでも解消されない場合、岡山赤十字病院(北区青江)の専門チームがケアに乗り出すが、これまで例はない。

 消防局管内(岡山市、吉備中央町)の救急車の現場到着時間は平均8・7分(11年)。到着前の救命措置が重要になる。同局は「ためらわずに蘇生処置ができる人を講習会などを通じて増やし、救命率向上につなげたい」としている。

 消防局の取り組みを受け、今年1月から県内では玉野市、東備消防組合、赤磐市、瀬戸内市の4消防本部でもバイスタンダー支援カードの手渡しを始めた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年02月05日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ