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在宅患者の食事支援で派遣 県栄養士会が病院の退職者ら

家族(左端)らにメニューの写真を使って説明する栄養士(左から2人目)

 岡山県栄養士会(森恵子会長)は、病院や福祉施設を退職した栄養士らで専門チームを作り、療養中の患者宅に派遣する新たな取り組みを進めている。中四国唯一の活動で、退院後の食事など栄養管理が不十分なため健康状態が悪化する人が多いとされる現状を受けて実施。患者のニーズに応じた献立や調理法など、きめ細かな指導が好評だ。

 これまで在宅の栄養指導は、介護保険制度の要介護認定を受けた人に限って月2回まで受けられたが、制度の認知度が低かったり、他のサービスを選択するといった理由で利用は少ない。一方、栄養士側も病院などに勤務している人がほとんどで、訪問指導の時間的余裕がなかった。

 こうした課題を解消するため、定年退職や結婚、子育てなどでいったん“最前線”を離れた40―70代の38人が専門に担当。栄養状態の評価方法や指導記録の書き方の研修を受けた後、指導に出向く。

 厚生労働省のモデル事業として昨年7月、無料でサービスを開始した。現在の利用者は11人。栄養士は月1、2回、患者宅を訪問し、かかりつけ医から得た病状や体重、血圧などの情報を基にして、1日当たりの摂取カロリー、糖分、塩分量などを計算して参考になる献立を作る。また、メニューのアレンジの提案や食べやすい調理法の実演もする。

 肝臓の手術を受けた後、自宅療養中の岡山市中区、佐藤正恵さん(98)の家族は昨年10月から月2回の支援を受けている。介護に当たる長男の妻時枝さん(78)は、肉や野菜を小さく刻んでかたくり粉でとろみをつけることを学んでから、正恵さんの食事量が格段に増えたといい「食が細く、ずっと悩んでいた。今は『おいしい』と笑顔で言ってもらえてうれしい」。往診している三宅靖彦医師(76)は「栄養指導で、低タンパク血症による手足の腫れが引き、顔色もずいぶん良くなった」と効果を強調する。

 今後は、診療所の戸別訪問や県医師会と連携してニーズの掘り起こしに努める。小林計子顧問は「在宅療養には、体調や病状に合った食事が不可欠。医師と協力して最適な食事を提案するので積極的に活用してほしい」と話している。問い合わせは県栄養士会(086―273―6610)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年02月19日 更新)

タグ: 健康介護高齢者

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