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放射性物質 分布や線量1枚の画像に 岡山大生グループ 福島で撮影成功

グレイで1時間半かけて撮影した画像。放射性物質がある場所が赤や黄などで示され、その色で線量の高低を識別できる

(左から)村川由希子さん、福林新さん、森岡朝美さん

 岡山大薬学部4年生グループは、東日本大震災による福島第1原発事故で拡散した環境中の放射性物質を、医療用に開発中の特殊カメラを使って福島県内で測定。複数の放射性物質を同時に写し出すことに成功し、環境モニタリングへの応用が可能なことを確認した。震災から間もなく2年を迎えることから、指導した榎本秀一教授は「早期に実用化し、汚染や除染状況を把握して健康被害を少しでも減らしたい」としている。

 グループは福林新さん(21)、森岡朝美さん(23)、村川由希子さん(23)の3人。昨年11月下旬から1週間、榎本教授と理化学研究所が開発している特殊カメラ「GREI(グレイ)」で測定した。

 グレイは、生体を傷つけずに体内の患部や薬剤の動きなどを映し出す「分子イメージング」に活用しようと、2003年に試作品を完成させた。放射性物質が出すガンマ線を感知する装置2つを並べるなどした構造で、複数の放射性物質を同時に観測できるのが特徴。環境中の放射性物質はサーベイメーターと呼ばれる機器で測定できるが、その分布範囲や種類の特定はできないという。

 3人は福島県飯舘村の国道脇にカメラを設置し、路面と落ち葉がたまったのり面を1時間半かけて撮影。セシウム134、同137といった放射性物質の残存を写し出した画像を重ね合わせ、1枚の画像に収めた。放射性物質の分布状況と、放射線量の高低を赤や黄色で示すことができた。

 同県の浄化センターに保管されている、放射性物質で汚染された廃棄物が入ったドラム缶も調査。同様の画像を得ることができたが、いずれも画像中央部の写りが良くないことや撮影時間が長いなどの課題も見つかり、カメラの改良に生かす。

 千葉市で2、3日にある「第2回サイエンス・インカレ研究発表会」(文部科学省主催)で成果を発表する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年03月01日 更新)

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