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マダニ感染症、検査態勢整備急ぐ 岡山県環境保健センター

厚生労働省から提供を受けた検査キットを調べる岡山県環境保健センターの研究員

新たな感染症を媒介するマダニ(岡山県環境保健センター提供)

 野山に生息するマダニが媒介するウイルス性感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染し、国内で死者5人が確認されたことなどを受け、岡山県環境保健センター(岡山市南区)は3月中に血液中のウイルスの検査態勢を整える。有効なワクチンや治療法はなく、中国では致死率十数%。行楽などで野山に入る機会が増え、マダニの活動が活発化する季節になるため警戒を強化する。

 SFTSは2009年に中国で集団発生し、11年に新たな感染症と判明した。マダニが感染源とされ、6日〜2週間で発症。高熱や吐き気、血便などの症状がみられる。1月末に国内で初確認されたため、厚生労働省は2月、感染症法に基づき報告義務対象に指定。これまで検査機関は国立感染症研究所(東京)だけだったが、各都道府県にも設けるよう求めた。

 これを受け岡山県は、県環境保健センターでの検査態勢づくりを急いでいる。15日に厚労省から検出作業のマニュアル、検査キットの提供を受けた。検査開始時期を協議中で、医療機関から連絡があった感染が疑われる患者の血液中の遺伝子からウイルスを調べる。現在は検体を東京に送るため結果判明までに1週間以上かかるが、大幅に短縮される見込み。

 同センターによると、県内では同じ症状で原因不明とされた死亡例などの「疑い症例」は確認されていない。しかし、県や倉敷市保健所などには1月以降、「かまれたら、どうすればいいのか」などの問い合わせが相次いでいるという。県はホームページで症状の特徴や対処法などを掲載、ダニが媒介する日本紅斑熱やツツガムシ病とともに注意喚起している。

 初確認された山口県の成人女性は昨秋、発症から約1週間後に死亡。広島、愛媛、長崎、宮崎県でも2005〜12年に感染者が亡くなったことが2月末までに判明した。3月には高知、佐賀、長崎県の3人が以前感染していたことも分かった。いずれも血液からウイルスの遺伝子が見つかったが、中国で確認された配列とは異なり、日本にもともといたウイルスとみられる。

 県環境保健センターの岸本寿男所長は「野山では長袖、長ズボンを着用するなど肌の露出を極力避けてほしい。かまれても気付かないケースがあるため、高熱や発疹(ほっしん)が出たら、すぐ医療機関へ」と呼び掛けている。

マダニ 体長3ミリ〜1センチ。国内全域の森林や草地に分布する。かまれても痛みやかゆみを感じず、長ければ1週間程度、血を吸い続ける。中国では主にフタトゲチマダニがSFTSの感染源と確認された。室内に生息するイエダニ(0.5〜1ミリ)とは異なる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年03月18日 更新)

タグ: 感染症

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