文字 

がん検診の受診率低迷 岡山県内自治体、歯止めへ対策

肺がん検診のエックス線検査。受診率アップに向け各自治体で対策を進めている=総社市

 岡山県内の市町村が行うがん検診の受診率が低迷している。肺がんはピーク時の半分以下、他のがんも低落傾向だ。検診制度の変化や、2008年度にメタボリック症候群の予防などを目的とした特定健診が別途始まり、受診者には分かりにくくなったことも原因とされる。春から検診が増えるのを前に、各自治体はあの手この手で受診勧奨に努めている。

 県内のがん検診受診率は2011年度で胃がん15・8%、肺がん29・9%、大腸がん22・5%、子宮がん24・9%、乳がん18・1%。乳がん以外は全国平均を上回っているが、肺がんはピークの1993年度(68・0%)の半分以下、胃は98年度(30・6%)の半分強、大腸は03年度(33・6%)から10ポイント以上下がっている。

 受診率の低迷は全国的な傾向。98年度に自治体の検診費用が一般財源化され、国からの補助が減少したため対策が少なくなった。さらに、肺がんでは05年度に結核検診の対象者が15歳以上から65歳以上に引き上げられ、エックス線検査を受ける人が減ったことも影響している。

 最近拍車を掛けたとみられるのが、健保組合など加入保険者ごとに行うよう定めた特定健診の導入。がん検診は従来通り市町村で受診可能だが、「会社員の妻らが夫の勤め先の健保組合などの指定医療機関でしか受けられなくなったと誤解している例もある」(県健康推進課)という。特定健診とがん検診が別々に行われることも足が遠のきがちな理由とされる。

 こうした状況に歯止めをかけようと、各自治体ではきめ細かな対策を打っている。

 総社市は検診会場を11年度から38カ所を52カ所に拡大。「民家やタクシー会社の前など身近な場所で受けられるようにした」と同市健康づくり課。検診の案内も多くの地区で従前の回覧だけでなく全戸配布にしたほか、13年度は「レディースデー」と銘打って、乳がんの視触診とマンモグラフィー、子宮がん検診をセットで受けられる日を2日から9日に増やした。

 矢掛町は年度初めに全戸に検診の調査票を送付、さらに検診の予約日の約1週間前に確認の電話をする。「若い人に働き掛けよう」と愛育委員が町内の学校やPTA行事に出向いて啓発もしている。

 岡山県はがんの75歳未満年齢調整死亡率(人口10万人当たり)が低く、女性は11年49・7人と全国1位(男性は99・2人で同10位)。こうした状況を支えているのが検診による早期発見・治療ともいえる。

 西井研治・県健康づくり財団付属病院長は「がんは早期で見つかるかどうかで治癒率が大きく違うし、かかる医療費も変わってくる。地域ごとの取り組みで受診率を上げることが必要」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年04月01日 更新)

タグ: がん

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ