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開腹せずロボットで胃がん切除 岡山大病院、国内初成功

胃がん手術などに活用されている岡山大病院のダビンチ

 岡山大病院消化管外科は胃上部の早期がんを切除し、温存した胃と食道をつなぐ「噴門側胃(ふんもんそくい)切除術・観音開き法」を、日本で初めて手術用ロボット・ダビンチを使って成功させた。患者は既に退院して体重も増加するなど、順調に回復しているという。

 胃上部のがん治療は胃を全摘し、食道と腸を直接結ぶ外科手術が主流。だが、摘出で頻繁に食物の逆流が起きるのがネックだった。

 これを防ぐため、胃の下部2分の1から3分の2を温存する噴門側胃切除術も行われるようになり、観音開き法が1997年に登場。従来通りの開腹でも、腹部に開けた小さな穴から器具を入れる腹腔(ふくくう)鏡でも行えるが、手順が複雑で難易度が高く、全国でも数施設しか実施していない。

 ダビンチはアーム3本と高性能カメラが付いた米国製ロボット。執刀医は手術台から離れた作業台に映る鮮明な3次元画像を見ながらアームを操って患部を切除する。アームなどを差し込む小さな穴を開けるだけでよく、開腹手術よりも出血が少なく患者の負担を軽減できる。

 ダビンチによる60代男性への手術は2月、消化管外科の西崎正彦助教が担当。8時間ほどかけて、可動域が360度あるダビンチのアームで患部を切除、食道とつなぎ合わせた。出血はほとんどなく、2日目には一般病棟へ移り、4日目には流動食も口に。2週間後には退院でき、食物の逆流も起こっていないという。

 同科の藤原俊義教授と西崎助教は「みぞおちの奥の狭い場所での手術だが、ダビンチのアームは小さく可動制限がないため、とてもスムーズだった」と話した。今回の手術は主に安全性と有効性を確かめる臨床研究として実施。残り4症例を計画している。


 噴門側胃切除術・観音開き法 がんがある胃の上部を3分の1から2分の1切除して縫合。胃正面にアルファベットのHを横にした浅い切れ込みを入れ、表面の層・筋層だけを観音開きにする。内部まで達する横2センチの切り口をつくり、食道出口と結び付け、開いていた筋層を食道にかぶせる。胃上部には食物の逆流を防ぐ弁があり、患部摘出でなくなって頻繁に逆流が起きるが、観音開き法では筋層をかぶせるため、食道出口が弱く押しつぶされて“ふた”となり、逆流を防ぐ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月03日 更新)

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