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小児心筋再生医療の有効性検証 岡山大病院、臨床研究に着手

 先天性心疾患を持つ小児自身の心臓幹細胞を採取して培養した後、心筋に移植して機能を強化する「再生医療」を世界で初めて成功させた岡山大病院(岡山市北区)の王英正・新医療研究開発センター教授と、佐野俊二心臓血管外科教授らは23日、有効性を検証する臨床研究に着手した。成功すれば、一般的な医療である保険適用へ大きく近づくことになる。

 これまで3歳以下の患者7人に研究治療を実施。全員ポンプ機能が向上し、大きな副作用はなく安全性が確認できたことから、今回は対象を20歳以下の34人に拡大した。

 組織採取1カ月後に幹細胞を移植するA群と、組織は採取するが、移植しないB群とに無作為に分け、3カ月間経過を観察。心臓のポンプ機能などの差を比較する。B群の患者でも培養はしており、希望すれば4カ月後に移植を受けられる。

 採取は血流改善手術の中で行われ、1例目となる左心低形成症候群の女児(4)=岡山市=への手術は佐野教授の執刀で23日午前に開始。取り出した心臓組織100ミリグラムはすぐに無菌室に運ばれ、培養が開始された。

 女児の両親は「手術は5回目。少しでも症状が改善すればと期待している」と話した。

 これらの先天性心疾患では移植しか治療法がない場合も少なくないが、国内では小児の脳死ドナー(臓器提供者)がほとんど現れず、海外移植に頼らざるを得ないのが現状。今回の再生医療で心筋を強化して身体を成長させれば、移植につながる可能性が増す。

 王教授は「多くの問い合わせがあり、患者や家族の期待の高さを感じている。一刻も早く保険適用されるよう努めたい」と話している。


 【小児の心筋再生医療】 岡山大病院が2011年3月から取り組む世界初の治療法。対象は生まれつき左心室がほとんどない単心室症や非常に小さい左心低形成症候群など、血液を全身に送り出す機能が弱い小児。心臓組織約100ミリグラムを採取し、幹細胞を抽出して10日間培養して増やし、体重1キロ当たり30万個を冠動脈へカテーテルで注入する。同症候群患者7人に実施したところ、ポンプ機能が最大で20%向上するなど全員に効果があった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月24日 更新)

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