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卒煙 岡山からの報告 上 目標12% 「吸わない」入社条件に

禁煙を入社条件にしたザグザグ。就職説明会で学生にその趣旨が告げられた=3月、岡山市中区

 「私たちはお客さまの健康づくりをサポートする仕事。入社する方には禁煙を約束していただきます」

 3月上旬、中四国を中心にドラッグストア104店舗を展開する「ザグザグ」(岡山市中区)で開かれた就職説明会。下村かほり人事採用部長が学生約100人にこう説明した。

 1990年の創立当初から取り組む社内禁煙強化に向け、来春入社予定者から禁煙を義務付けた。誓約書は作らないが採用試験の面接時に約束してもらい、喫煙すると昇進や賞与カットに反映させる。岡山市の私立大男子(23)は「吸わないので苦ではないが、正直驚いた。お客にも社員にも良いことなので協力したい」と話した。

 禁煙を採用条件に盛り込む動きは全国の製薬、ホテル業界でも広がり始めているが、県内では珍しい取り組みとして注目された。

初の設定 

 厚生労働省などによると、たばこには4千種類以上の化学物質が含まれ、うち200種類が有害物質。肺がんや心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患のリスクを高め、喫煙による死者は2010年の推計で12万―13万人に上る。

 国は官公庁や病院、飲食店など公共の場での受動喫煙防止を努力義務とした健康増進法(03年施行)を皮切りに、テレビでの広告規制やたばこ税引き上げなどを推進。この結果、03年27・7%だった成人男女の喫煙率は、10年には19・5%に下がったが、「諸外国に比べて依然として高く、年間約4兆円の医療費と労働力損失を招いているとの試算もある」と厚労省がん対策健康増進課。

 このため、昨年見直した「がん対策推進基本計画」で、初めて数値目標を設定した。喫煙者のうち「禁煙したいと思っている人」は約4割。この人たちが全員禁煙すると実現する成人男女の喫煙率12%を22年度までに目指そうというのだ。

 県も今年3月に刷新した健康増進計画「健康おかやま21」で国と同様の目標を掲げ、10年間で5・6ポイントの低下を目指す。

 「県民の健康生活を守るため、禁煙は最重要課題の一つ。目標設定を契機に啓発、予防、やめたい人の後押しを含めた支援活動を積極的に進めたい」と県健康推進課。本年度中をめどに、県内7カ所の国指定がん診療連携拠点病院に愛煙家らを対象にした電話相談窓口を設置。保健師や薬剤師らが禁煙方法を助言したり、県内248医療機関にある禁煙外来を紹介するもので、協力病院を募集している。

社会に貢献

 創業50年近い老舗の喫茶店「カフェギャラリー竹」(倉敷市神田)。店内には住民の写真や絵画が並ぶ。5年ほど前から全面禁煙を実施しており、西崎一雄オーナー(66)は「当初はコーヒーを飲みながらたばこを楽しむ常連の足が遠のかないか不安だったが、ほとんど影響はなかった」と話す。

 ここ数年、禁煙への機運が徐々に高まる中、ジレンマを抱きながらも禁煙に踏み切った企業や店舗。採用試験シーズン大詰めを迎え、ザグザグは初の試みをどう振り返っているのか。

 これまでの受験者は昨年より300人ほど多い約2500人。下村部長は「自分と会社のためにと、みんな禁煙を約束してくれ安心した。取り組みとしては成功。企業の責務として禁煙社会推進に貢献したい」と手応えを感じている。

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31日の「世界禁煙デー」を皮切りに始まる禁煙週間(6月6日まで)。“卒煙”に向け、県内で加速する取り組みや課題をリポートする。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月30日 更新)

タグ: がん健康

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