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卒煙 岡山からの報告 中 “受動”を防げ 喫煙禁止場所広がる

路上喫煙防止条例の施行に伴い、JR倉敷駅北口に設置された指定喫煙所。周知が課題となっている

 今月26日の日曜日。JR倉敷駅北口の片隅で、買い物中の家族と離れてたばこをくゆらせていた会社員男性(56)が寂しそうにつぶやいた。「昔はどこでも吸えたのに。どんどん肩身が狭くなる。悪いことをしているつもりはないんだが…」

 倉敷市は4月1日から、倉敷みらい公園や駅南ロータリーなど駅周辺での喫煙を禁止した「市ポイ捨て・路上喫煙防止条例」を施行。たばこを吸えるのは、駅北・南口の指定喫煙所4カ所だけになった。

 駅北に2年前、大型商業施設がオープンして人通りが急増。受動喫煙も心配だし、手にしたたばこの火が通行人に触れると危ない。条例は、市職員の注意に従わずに吸い続けるなど悪質な違反には1万円以下の支払いを命じることもあるといった内容だ。

 「当面は周知期間としているため喫煙者への声掛けはしておらず、これまで苦情やトラブルはない。ただ吸い殻のポイ捨てが散見されるなど、必ずしも徹底できているとは言えない」と市環境衛生課。

 6月には条例の認知度を調査する一方、今後も街頭啓発などを進めるという。

増える認定施設

 国が昨年見直した「がん対策推進基本計画」では、吸わない人を脅かす受動喫煙の防止を重要項目に掲げる。

 国の研究などによると、喫煙者がフィルターを通して吸う煙よりも先端から出る副流煙に多くの有害物質が含まれる。非喫煙者がその煙を吸うと肺がんや心筋梗塞などのリスクが高まるという。

 “煙害防止”に向け、岡山市は2007年からJR岡山駅周辺や表町周辺などでの喫煙を禁止した。岡山大は04年からの鹿田キャンパス(同市北区鹿田町)に加え、14年4月から津島キャンパス(同津島中)も全面禁煙とする。津島での実施決定後、学生アンケートでは男性7割、女性9割程度が賛成だった。同大保健衛生管理課は「在学中にたばこを覚える学生も少なくない。受動喫煙を防ぐとともに、将来の喫煙者減少にもつなげたい」と期待を寄せる。

 県が03年度から官公庁や医療機関を対象に進める禁煙・分煙化施設の認定制度では、灰皿の撤去など基準を満たした認定施設数(3月末現在)は2157件。03年度(288件)の約7・5倍に上り「意識は確実に高まっている」と県健康推進課。

市民も要望

 市民主導の動きもある。昨年5月には専門家の立場から禁煙を訴えようと、県内の内科医ら約50人が啓発団体「タバコフリー岡山」を結成。今年4月には、公共の場での全面禁煙を義務付ける条例制定の要望書を県に提出した。今後、学校での未成年喫煙防止や企業の社内禁煙を求める出前講座を開く計画だ。

 こうした機運の高まりに、日本たばこ産業(東京)は「たばこは合法的な嗜好(しこう)品で、喫煙は本人の判断。目標値の設定などが個人の選択の介入につながらないようお願いしたい」と、愛煙家への配慮を求める。

 喫煙の自由を認めつつ、いかに周囲の人々の健康を守るか―。禁煙・分煙は愛煙家の自主性に負うところが大きく課題は多いが、たばこの害のない街づくりへの取り組みは欠かせない。

 タバコフリー岡山副会長を務める西井研治・県健康づくり財団付属病院長は「国や県の喫煙率12%という目標設定を形骸化させては意味がない。税の引き上げや広告規制強化、地道な啓発活動など、行政や企業、市民がさらに積極的な取り組みを進めなければ」と強調する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月31日 更新)

タグ: 健康

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