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笑いでがん吹き飛ばせ 岡山の松尾さん

松尾実さん

 「余命1年のコメディアン」。自分のことをそう呼ぶようになった。

 岡山市北区の松尾実さん(75)。末期の大腸がんで、同市内の総合病院の緩和ケア病棟に入院中だ。昨年取材した時より痩せたように見えるが、持ち前の明るさは変わらない。

 腹全体が押さえ込まれるような痛みに襲われて緊急入院したのは今年4月。がん細胞の転移は手の施しようがなく、医師から余命宣告を受けた。

 松尾さんを支えてきたのは「笑いの力」だ。2009年に「笑うことで免疫力が高まり、がんの進行も遅くなる」と新聞記事で読み、「がん患者交流・笑う会」を立ち上げた。

 岡山市内の公民館や老人施設で一人コントを披露。昨年4月には同市での「ひとりお笑いグランプリ」にも挑戦した。

 舞台だけでなく、病室にも笑いがあふれる。検査のため、看護師が「お迎えに来ました」と言うと「まだ生きてます」。

 「笑いで免疫力が高まるのは本当」と松尾さん。07年の最初の手術の時、医師から告げられた「5年以内の生存率10%」を既に過ぎ、自分の命で示しているからだ。

 もう一度独演会を―。それが松尾さんの目標。「みんなの笑いで、私の腹の中のがんを吹き飛ばしてほしい」。笑いで勇気を与え、もらう。その日を夢みて今日もベッドでギャグを考える。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月01日 更新)

タグ: がん

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