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卒煙 岡山からの報告 下 成功のために 冷静にメリット考えて

「禁煙成功には目的を明確にすることが大切」と話す佐藤院長

 健康への害が分かっていてもやめられないたばこ。これから禁煙を目指す人への心構えや成功のためのアドバイスを、県内の医療関係者らでつくる禁煙啓発団体・タバコフリー岡山の事務局長で、「佐藤医院」(岡山市北区旭町)の佐藤涼介院長(55)に聞いた。

 ―なぜ簡単にやめられないのか。

 煙に含まれ、強い依存性があるニコチンが原因。ニコチンは脳に達すると、快感物質ドーパミンを放出させる働きがある。喫煙を繰り返すと体が快感を持続させようと、ニコチンを求めるようになる。れっきとした依存症だ。

 ―依存を断ち切るには。

 まず何でもいいから禁煙の目的を明確にすることだ。健康面はもちろん、1箱400円として1日1箱吸っている人なら1年で約14万6千円、10年で146万円の節約になる。臭いも克服できるなど利点は多い。自分だけでなく、家族のためにと考えると決意も固くなるのでは。禁煙のメリットとデメリットを冷静に比べてほしい。

 ―効果的な禁煙方法について教えて。

 軽いたばこにしたり本数を減らす「減煙」は意味がない。軽くすれば結局は本数が増え、本数が減っても喫煙する限りニコチン依存は解消されない。自分の意志だけで難しければ、禁煙外来を利用するのも有効だ。

 ―禁煙外来ではどんな治療をするのか。

 脳がニコチンを求めることを防ぐ錠剤を使った治療が主流だ。通常は12週間服用し、徐々にたばこがおいしく感じなくなり、やめられる。腕や背中に貼るニコチンパッチもあり、2006年から健康保険が適用されて費用は1万2千~1万8千円。当院では年間50~60人が挑戦し、7割近くが成功している。5月にも長年1日20本吸い続け、自力ではやめきれなかった20代男性が成功した。患者の中には、40年間吸っていた人や10代からの喫煙者らさまざまな人がいるが、「こんなにあっさりやめられるのか」と驚く人が多い。

 ―長年吸っていても効果は期待できる?

 禁煙は短期間で効果を実感できる。2~3週間で肺活量や血圧が改善、1~9カ月で咳せきや息切れが無くなってくる。継続すれば、がんや脳卒中のリスクも吸わない人と同程度に低くなる。遅すぎることはない。

 ―禁煙中に注意すべき点は。

 たばこは当然だが、ライターや灰皿を処分したり、居酒屋などよく吸っていた場所に近づかない工夫も必要。そして「1本だけ」と吸ってしまう“1本おばけ”の誘惑に負けないでほしい。強い依存性のため、ほとんどの人が再開してしまう。それまでの努力や効果を思い出して耐えてほしい。

 ―周囲の人に協力できることはあるか。

 たばこを勧めないこと、目の前で吸わないこと。決意が揺らいでいる人には、最初の目的を思い出させてあげて。本人も支える人の顔を思い浮かべながら挑戦を続けてほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月01日 更新)

タグ: 健康

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