文字 

難聴児の言葉指導30年 岡山かなりや学園の問田さん

教え子からのメールが「何よりの喜び」と言う問田さん。将来の自立を願って指導にも熱が入る

 岡山県内唯一の難聴幼児通園施設「岡山かなりや学園」(岡山市北区西古松)で、言語聴覚士の問田(といた)直美さん(51)は約30年間、100人を超える子どもたちの言葉の習得に携わってきた。思いもかけぬ障害に動揺する保護者にも向き合い、家庭と合わせた早期療育の効果を説明。「いつの日か親子同士、笑顔で会話をしてほしい」という思いで突き進んできた。

 同園は全国に先駆けて1975年に設立。新生児聴覚検査で難聴と診断された乳幼児を受け入れ、現在、県内外の68人が利用する。

 問田さんは84年に岡山大教育学部を卒業し、同園に就職。当時は難聴療育のカリキュラムもない。得意の電子オルガンを生かして、補聴器を付けた子どもたちと童謡を歌って口の動きを伝えたり、興味を持った絵本の登場人物役を演じさせるなど、自分なりに工夫して正しい発音を指導してきた。

 千人に1、2人の割合で見つかる先天性難聴児は生後1年以内の療育で、就学時には同年齢の子どもと変わらない単語数が話せるようになるという。

 それだけに、家庭での接し方も重要になる。就職して5年目のころ、ある母親はわが子の障害を受け入れられず、来園のたびに泣いていた。「決して一人で抱え込まないで。でも、子どもの前で泣くのは不安を与えるのでやめて」と声を掛け続けた。「難聴を克服するには親の理解が必要。障害に対して前向きになってほしい」との信念からだ。

 20年以上前に卒園した子どもたちとは、今でも携帯電話のメールで交流を続ける。「就職が決まりました」「結婚したよ」―。「わが子のように指導した彼らが立派に成長していくのが何よりうれしい」と言う。

 大森修平園長は「子どもをよく観察して、症状や性格に応じた指導で言語力を引き出している。保護者からの信頼も厚い」と期待を寄せる。同園の言語聴覚士10人のリーダー格として後進の指導にも定評があり、問田さんは「若い人に自分が持っている知識を全て伝え、一人でも多くの難聴児を地域社会に送り出せれば」と願っている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月14日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ