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生体肺中葉移植に成功 岡山大病院、世界初

3歳男児に母親の右肺から中葉部分を摘出して移植する手術=1日午後(岡山大病院提供)

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で1日、重い肺の病気に苦しむ男児(3)=関西地方在住=に、母親の肺の中葉部分を移す生体肺移植が行われ、開始から11時間後に無事終了した。同大病院によると、技術的に難しいとされてきた生体肺中葉移植の成功は世界初の快挙で、男児は国内最年少の肺移植患者となった。

 手術後、会見した大藤剛宏肺移植チーフは「250例以上の自身の経験の中で最も難しい手術だった。今まで移植で助けられなかった同じ境遇の子どもたちに道を開き、勇気を与えられる成果だ」と話した。

 手術は大藤チーフを執刀医とするチーム30人が担当した。午前10時5分から、母親の右肺の中葉を摘出し、体外保存に必要な処置を実施。午後1時35分から男児の右肺と取り換える手術を行い、午後9時に終了した。肺は順調に機能しており、男児は早ければ1カ月後に、母親は2週間後に退院の見通し。

 肺は表面の深い切れ込みで区分され、右肺は上葉、中葉、下葉が、左肺は上葉、下葉がある。生体肺移植は通常、肺活量が最も多く、肺全体の形と似ている下葉で行うが、男児にはサイズが大きすぎるため、大藤チーフと両親との話し合いで中葉移植を決断した。下葉とは形や血管の位置が異なるため、移植にはより高度な技術が求められるとされる。

 男児は1年9カ月前に白血病治療で骨髄移植を受けたが、移植された細胞が患者の体を異物と認識して攻撃するGVHD(移植片対宿主病)を肺で発症し、呼吸機能が著しく低下。酸素吸入で生命を維持する状態が続き、移植しか治療法はなかった。

 岡山大病院の生体肺移植は66例目で、脳死と合わせると111例目。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月02日 更新)

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