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男児の経過順調 岡山大病院、生体肺中葉移植

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)が世界で初めて成功させた生体肺中葉移植から一夜明けた2日、集中治療室(ICU)に入った男児(3)=関西地方在住=の経過は順調で、手術終了後に対面した父親は涙を流し、成功を喜んだという。ドナー(臓器提供者)となった母親もICUから一般病棟へ移り、3日にも予定される面会を心待ちにしている。

 執刀医の大藤剛宏肺移植チーフによると、男児は麻酔が効き、人工呼吸器を装着した状態だが、呼び掛けやたんの吸引に若干反応するなど、容体は安定。24時間態勢で厳重な術後管理を行っており、今後は人工呼吸器を取り外し、移植肺で自力呼吸ができるよう治療し、1カ月後の退院を目指す。

 手術開始(1日午前10時すぎ)から病院内で待機していた父親と祖母2人は同日午後10時ごろ、男児と面会。3人は感極まって言葉に詰まったが、すぐに男児の手や額をいとおしそうになでた。父親は「息子を救ってくれたスタッフに感謝する。元気になったら一緒に遊園地へ行きたい」と話した。

 男児は1年9カ月前に白血病治療で骨髄移植を受けたが、肺で強い拒絶反応が起きて呼吸機能が著しく低下、救命法は移植しかなかった。今回の移植で呼吸機能は回復し、体は今後大きく成長していく。だが、母親からの“命の贈り物”である肺の中葉は大きくならないため、数年後には肺活量が不足する見込み。その際に必要な再移植では父親がドナーとなることを希望。脳死移植も含め、最善の方法を模索していくという。

 大藤チーフは「手術成功は将来にわたり、普通の生活を可能にするための最初のステップ。無事退院し、自宅で暮らせるよう最善を尽くしたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月03日 更新)

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