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新出生前診断、陽性なら中絶6% 妊婦意識調査、確定検査受ける74%

 ダウン症などの胎児の染色体異常を妊婦の血液で調べる新しい出生前診断について、岡山大大学院保健学研究科の中塚幹也教授(生殖医療)らがまとめた妊婦の意識調査の中間報告で、検査結果が陽性の場合、中絶すると答えた人が6%だったことが分かった。一方で、確定診断に必要な羊水検査を受けると回答した人は74%、同検査を受けないとした人は20%だった。

 新しい出生前診断は血液だけで簡便に行えるため、広く普及すれば「命の選別」につながるとの指摘もあり、日本産科婦人科学会は高齢妊婦らに対象を限定している。今年4月から順次、全国22病院が臨床研究として実施。岡山大病院も中国地方で初めて認定され、近く開始予定。

 調査は大学院生の美甘祥子さんらが3~6月、大阪府、広島、兵庫県内の5病院の妊婦に実施。483人分の回答を集計した。

 同診断を知っているか尋ねたところ、約8割の妊婦が「よく知っている」「聞いたことがある」とした。検査方法を知っていたのは75%に上ったが、羊水検査をしなければ確定診断にならないことの認知度は34%だった。

 望ましい検査対象は「希望する妊婦」が70%、「ダウン症などのリスクが高い妊婦」が19%、「全員」と「一定の年齢以上」がそれぞれ6%。陽性と判定された場合、精神的ケアを望む妊婦の割合は86%。「ダウン症に詳しい小児科医から説明を受けたい」が84%、「ダウン症の子どもを持つ母親と話したい」は42%だった。

 中塚教授は「同診断の普及の流れを止めることは困難だろう。今回の調査がきっかけとなり、正しい知識に基づき納得して検査を受けるかどうかを決められる体制づくりにつながれば」としている。

新しい出生前診断 妊婦の血液を採取し、胎児のDNA断片を解析することでダウン症と、呼吸障害などをもたらす計3種類の染色体異常を調べる検査。確定診断には精度がほぼ100%で、妊婦のおなかに針を刺して子宮内の羊水を採取、胎児細胞を調べる羊水検査が必要になる。新しい出生前診断は妊娠10週から可能で、羊水検査のような流産の危険性がない。陽性の場合、胎児がダウン症の可能性は35歳以上で80~95%だが、陰性の的中率は99%以上とされる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月06日 更新)

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