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マダニ感染症 予防徹底を 県など治療体制づくり急ぐ

 12日、岡山県内で初めて感染が確認された「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)。1月以降、西日本で相次いで死亡例が報告される中、「いつ発生してもおかしくない」と危機感を強めていた県内の医療関係者らは、さらなる感染を懸念する。根治療法がなく重症化しやすいだけに、予防の徹底と早期受診を呼び掛ける一方、診断・治療の体制整備を急いでいる。

 SFTSは血小板や白血球の減少などが起き、最悪の場合、多臓器不全などで死に至る。ウイルスは以前から国内に存在していたと考えられるが、「媒介するマダニの種類、詳しい感染経緯などの調査はこれから」と厚生労働省結核感染症課。

 マダニは田畑や山林、草むら、公園などに広く生息し、かまれても痛みやかゆみがないため、いつどこで感染したのかが分かりにくいからだ。これまで確認された死者13人は広島、愛媛、熊本など西日本に集中しており、国の研究班が本年度から3年間、発症事例などを詳細に調べる。

 ただ、現状では情報が不足しているため、医療機関では「38度以上の高熱や食欲不振などの症状だけでSFTSを疑うのは難しい」(岡山市内の開業医)と困惑が広がる。

 4月に60代の女性を治療した国立病院機構岩国医療センター(山口県岩国市)の担当医は「最初は脱水症状だと思っていたが、入院3日目で突然意識不明になり驚いた」と証言。たまたま右腕に付いていたマダニを見つけてSFTSに気付き、ICU(集中治療室)で回復させたという。

 岡山県は8月4日、医療従事者向けに研修会を開き、早期に診断・治療できる体制づくりに努める方針だ。

 県民への感染を懸念していた県環境保健センターの岸本寿男所長は「マダニが体に付着してから血を吸い始めるまで半日から1日かかる。その日のうちによく洗い流すことが大切だ」と指摘。症状に気付いたら、「早めの治療で重症化を防げることもある。すぐに受診してほしい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年07月13日 更新)

タグ: 感染症

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