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薬物依存者更生へ連携 岡山保護観察所と県精神科医療センター

 再犯率の高い薬物依存者の更生へ向け、岡山保護観察所(岡山市北区南方)は7月から、岡山県精神科医療センター(同鹿田本町)と初めて連携した治療プログラムに取り組んでいる。依存者が保護観察期間中、センターの作業療法士ら専門職と関わることで、期間終了後も継続して通院する足掛かりとし、再犯防止を狙う。

 薬物使用の被告らを対象にした「刑の一部執行猶予制度」が3年以内に始まると、プログラムを受ける保護観察対象者の増加が予想される。しかしプログラムは原則5回と短期間で、保護観察官の技量にも限界がある。さらに保護観察終了後、関係が途切れがちな対象者を医療機関にどうつなぐかが課題となっていた。

 このため法務省は昨年度から、薬物依存症の専門治療に取り組む医療機関があり、保護観察所との連携体制構築が可能な6都道府県をモデル地域に指定。岡山は今年4月に選ばれた。

 保護観察期間が半年以上の人がプログラムの受講対象で、岡山保護観察所は7月中旬から県内在住の20代女性1人に実施。保護観察官のほか、認知行動療法などを学んだ同センターの作業療法士、臨床心理士から、依存者の思考パターンなどを学び、自ら薬物を絶つ姿勢を身に付ける。

 ただし同センターの佐藤嘉孝・作業療法士は「保護観察期間後のセンター利用には強制力がない」とした上で「薬物依存克服に向けた動機付けが課題。通院につなげるよう粘り強く呼び掛けたい」と話す。

 岡山保護観察所は今後、対象者が増えれば集団でのプログラムも行う方針。多田野清統括保護観察官は「薬物依存者には長期間の治療が必要で、保護観察期間終了後は医療機関との連携が不可欠。取り組みを通じ、一人でも多くの依存者を更生させたい」としている。

 刑の一部執行猶予制度と薬物使用者 薬物使用や初犯の被告を対象に、3年以下の懲役・禁錮のうち、裁判所の判断で刑の一部の執行を1〜5年の範囲で猶予。例えば「懲役3年、うち1年を執行猶予3年」の判決では、刑務所を2年で出た後、3年間再び罪を犯さなければ服役の必要はない。薬物使用者には出所後、必ず保護観察が付く。法務省によると、2012年の治療プログラム受講者は全国で1331人。一部執行猶予制度が始まれば、保護観察対象者は年間3千〜4千人増え、多くが薬物使用者になるとの推計もある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年08月25日 更新)

タグ: 精神疾患

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