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視覚障害者の外出支援の質向上へ 岡山県が独自策、担い手減の懸念も

山口さん(左)をガイドする西田さん。視覚障害の専門的な知識などを生かす

 視覚障害者向けの外出支援サービス「同行援護」の質向上を目指し、岡山県は4月から、従事者を養成する研修の講師を専門性の高い歩行訓練士に限るなど、独自の取り組みを進めている。安全・安心なサービスを提供する狙いだが、受講料が高くなる上に研修の時間が増えたことで、従事者が減る懸念もあり、質と量の両立が課題となっている。

 「ハスの花が咲いてますね」「木陰に入ります」

 8月下旬、岡山市北区いずみ町の県総合グラウンド。県視覚障害者自立支援センターの西田紀子さん(46)が山口幸一さん(70)=倉敷市=に細かく声をかける。

 網膜色素変性症で両目がほとんど見えない山口さんは、週1回のマラソンの練習で同グラウンドとJR岡山駅を往復する際などに同行援護を依頼する。「道路のくぼみなど事前に教えてもらえるとイメージできて安心」と話す。

 西田さんは同センターの同行援護養成研修を7月に修了した。「木陰が段差に見える人もいるなど目の病気に関してより深い知識を得られ、きめ細かい対応ができる」と言う。

 同行援護は2011年10月に障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)で視覚障害者専門に創設されたサービスだ。以前は市町村の判断で実施する事業に含まれていたが、全国どこでも受けられる必須のサービスとなった。

 県は視覚障害者団体などと協議し、本年度から養成研修の講師を歩行訓練士に限定するとともに、12時間だった研修時間が従事者は一般課程20時間、事業所のサービス提供責任者は一般課程に応用課程12時間を加えたコースになった。

 同センターの奥村俊通理事長は「以前は階段の前でいったん立ち止まるかどうかなど対応が違い、不安を訴える利用者も少なくなかった」とし、「同行援護は街でどこに何があるかなど視覚情報を利用者に的確に伝えて自立を支える専門性が必要」とする。

 ただ、ハードルが上がったことで5事業者で行われていた研修は同センターのみに。1万5千〜3万円だった受講料も一般、応用合わせて7万2千円になり、「時間とお金をかけても、どこまで需要があるのか疑問」と岡山市内の事業者は話す。

 各事業者はサービス提供責任者が14年9月末までに研修を修了しなければ業務を継続できなくなる。現在82事業者が同行援護などの指定を受けているが、同センターの研修修了者は11人。これとは別に認められている日本盲人会連合会の研修修了者を含めても34人にとどまる。

 県内の視覚障害者で重度の障害者手帳1、2級所持者は約3500人に対し、同行援護利用者は12年度月平均で121人。県障害福祉課は「研修の実施事業者を増やすなどサービスが減らないよう努めたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年09月16日 更新)

タグ: 福祉

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