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中葉移植3歳児退院、岡山大病院 世界初成功、生体肺で国内最年少

母親(右)から肺の中葉を譲り受ける生体肺移植を受けた男児。左は執刀医の大藤チーフ=岡山大病院(代表撮影)

 岡山大病院(岡山市北区)で、30代の母親から右肺の中葉部分を摘出し、生体肺中葉移植を受けた関西地方の男児(3)が26日、退院した。中葉移植としては世界初の成功例で、男児は国内最年少の肺移植患者となった。

 男児は7月1日、手術を受けた。5日後には集中治療室で人工呼吸器が外され、1週間後には氷を口に。3週間後までには列車のおもちゃで遊ぶまでに回復した。

 リハビリテーションを続け、今月19日には母親らと病院近くの消防署を訪問。初めて間近で見る消防車に怖がる様子も見せたが、運転席に座るなど楽しい一日を過ごした。

 執刀医の大藤剛宏肺移植チーフによると、退院を迎えたこの日も、男児は自分の足で歩いて看護師らにあいさつ回りし、午前中に両親や付き添いの祖母と出発、午後の列車で自宅に向かったという。

 大藤チーフは「退院を迎え、安堵(あんど)している。肺は男児の体になじんでおり、今後も地元の病院と連携して見守りたい。今までの肺移植では助けられなかった幼い子どもたちに希望を与えることができた」とした。

 男児は1歳の時に白血病治療で骨髄移植を受けたが、移植された細胞が患者の体を異物と認識して攻撃する移植片対宿主病(GVHD)を肺で発症。呼吸機能が著しく低下し、酸素吸入で生命を維持する状態が続いた。

 移植しか治療法がなくなっていたが、体格が合う幼児の脳死ドナー(臓器提供者)が現れる可能性は極めて低く、肺で最も小さい中葉部分を移植することを決めた。通常の生体移植で使用する下葉とは大きさや気管支などの位置関係が異なり、非常に難しい手術とされていた。

 男児は今後、地元の病院に通院して経過観察するほか、岡山大病院で半年、1年後に検診。体が成長すれば、再度、肺移植が必要な可能性もあるという。

 生体肺中葉移植 肺は表面の深い切れ込みで区分され、右肺は上葉、中葉、下葉が、左肺には上葉、下葉がある。生体肺移植は通常、肺活量が最も多い下葉で行うが、身体の小さな乳幼児にはサイズが大きすぎるため、肺の中で最も小さい中葉部分を用いる。世界での実施例は米国の1例(1992年)だけだが失敗に終わっていた。岡山大病院が7月に世界で初めて成功させた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年09月27日 更新)

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