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提供待つ子に「新しい道」 脳死肺移植新ルール喜ぶ関係者

九州地方に住む女児の父親に新ルール決定を電話で伝える大藤チーフ

 脳死肺移植でドナー(臓器提供者)から摘出した肺の一部を切り取り、体格の小さな人や子どもに提供できる新ルールの導入が決まり、来年にも運用される見通しとなった。2年前に導入を提案した岡山大病院(岡山市北区)の大藤剛宏肺移植チーフは「移植の機会に恵まれなかった子どもたちに新しい道を開く決定。関係者に感謝する」としている。

 厚生労働省の作業班が新ルールを認めて一夜明けた3日、大藤チーフが診察室の受話器を取った。相手は脳死臓器提供を待つ女児(3)=九州地方=の父親。新ルールを聞いた父親は「良かった。娘が移植を受けられる可能性が広がったんですね」と喜んだという。

 脳死肺移植では、斡旋(あっせん)機関・日本臓器移植ネットワーク(東京)への登録患者のうち、ドナーの肺とサイズがほぼ同じ(適合)でなければ、候補者に選ばれない。一方、親の心情面などから小児の脳死ドナーはほとんど現れず、小さな子どもたちに移植の機会が巡ってくる可能性は極めて低いのが現状だ。

 大藤チーフは提供意思のあった脳死ドナーの肺が、肺炎などの「医学的な理由」で提供が見送られるケースに着目。「肺炎部分などを切除すれば、小さな子どもたちに移植できる」として、肺の分配方法の見直しを日本呼吸器外科学会に提案。同学会が国に同様の要望を出していた。

 新ルールでは、ドナーの肺が大きくても血液型が適合すれば候補者リストに加える。大藤チーフは「(年間30例ほどの脳死肺移植が)20例ほど増える可能性がある」とみる。

 重い肺の病気に苦しむ幼児を救う新たな方法を模索してきた岡山大病院は7月、肺の中で一番小さい「中葉」を移す生体肺中葉移植を世界で初めて成功させた。大藤チーフは「近く導入する弱ったドナーの肺を体外で回復させる技術などと合わせ、1人でも多くの患者を救っていきたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年10月04日 更新)

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