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謎の“微生物”はカルシウム結晶 岡山大大学院の公文教授ら確認

公文裕巳教授

特殊な方法で薄く切った「ナノバクテリア」の電子顕微鏡像

 生活習慣病などで石灰化した病巣で発見され、病気の原因となる“微生物”ではないかとされていた「ナノバクテリア」が、カルシウムの一種・アパタイトの結晶であり、酸化脂質が生成に関与していることを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の公文裕巳教授(泌尿器病態学)らの研究グループが突き止めた。成果は動脈硬化などの早期診断、治療法の開発へ応用が期待される。

 ナノバクテリアは直径200ナノメートル(ナノは10億分の1)程度で、細菌よりもはるかに小さく、ウイルスに近いサイズ。骨や歯の成分であるアパタイトの殻をまとい増殖するため、1997年にフィンランドの研究グループがその存在を報告して以来、謎の微生物として国際的な論争を呼んでいた。

 公文教授らは2004年、患者の尿路結石からナノバクテリアの分離に成功。試験管の中であたかも生物のように増殖することを確認したが、DNAは見つからなかった。

 今回の研究では、ナノバクテリアを特殊な方法で薄く切り、電子顕微鏡で解析したところ脂質膜のような構造を発見。酸化脂質を認識する特殊な抗体を用いて解析した結果、カルシウムと、主にカルシウムを結合する酸化脂質が何層も重なって表面が硬くなったアパタイトの結晶であることを突き止めた。

 この結晶化が連続的に起こることから、微生物の自己増殖に見えたという。またナノバクテリアは病気の原因ではなく結果であり、慢性炎症などにより酸化した脂質が、石灰化を誘発している可能性があると分析する。

 公文教授は「生活習慣病の診断や治療に応用していきたい」としている。成果は国際医学系雑誌の電子版に掲載された。
 
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年12月27日 更新)

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