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マレーシアに4月新拠点開設 AMDA30周年へ 菅波代表に聞く

菅波茂代表

 認定NPO法人の国際医療ボランティアAMDA(本部・岡山市北区伊福町)が今年8月、設立30周年を迎える。4月には新拠点となる地域統合事務所をマレーシアの首都クアラルンプールに開設して新たな事業を展開。3法人2団体のグループを統括する菅波茂代表(67)に今後の展望を聞いた。

 ―昨年11月に認定NPO法人の理事長職を退いた。

 4月以降、岡山とクアラルンプールで明確な役割分担をする。岡山では緊急医療支援の調整機能などNPO法人としての活動や国連への政策提言などに主軸を置き、クアラルンプールでは海外のローカルNGO(非政府組織)とのネットワーク構築や次世代の人材育成プログラムに力を入れる。

 岡山の活動は後任の成沢貴子理事長に支えてもらい、私自身はクアラルンプールを拠点に各国を飛び回り、現場でプロジェクトに携わる。

 ―地域統合事務所をマレーシアに開設する意図は。

 世界経済の中心が欧米からアジアにシフトしつつある中、アジア、イスラム圏との関わりがますます重要になってくる。“本丸”が岡山であることに変わりはないが、岡山だけでは地理的に限界がある。

 マレーシアは華僑を中心とした中国文化、インド系移民らのインド文化、国教であるイスラム文化が共存する。三つの文化に触れ、それぞれの価値判断を肌で感じることができる。この経験は海外で活動する際、パートナーとなる地元の団体と関係を築く上で非常に役に立つはずだ。さらにアジアの国際ハブ(拠点)空港があるという利便性も決め手の一つとなった。

 この事務所は、学生らを対象にした新しい海外研修プログラム「グローバル人財育成」の拠点となる。国内での事前研修を経て、東南アジアや南西アジアの国々で約1週間、AMDAの活動に参加してもらう。

 AMDAは多くの人々の善意に支えられてきた。感謝を形に表したいと考えた時、意欲ある若者に知識と経験を積む機会を与えるべきだと思った。われわれはこれまで1人の死傷者も出していない。AMDAが蓄積した経験と歴史を将来を担う若者たちに還元したい。

 ―30周年を迎え、今後の展望は。

 複数のプロジェクトを同時進行できるのが、AMDAの強み。現在も昨年発生した台風で甚大な被害を受けたフィリピンでの緊急救援活動をはじめ、ハイチ大地震の復興支援などを行っている。国内では東日本大震災の被災地・岩手県大槌町での取り組みなどが進行中だ。

 今後も世界の30支部と連携し、AMDAが築いてきた国際的なネットワークを拡充するとともに、深化させていく。そして相互扶助の理念を広めていきたい。


 AMDA(アムダ) 1984年8月に「多様性の共存」と「相互扶助」の理念に基づき、設立された。災害や紛争発生時、医療・保健衛生分野を中心に緊急人道支援活動を行う。これまでに65カ国・地域でさまざまなプロジェクトを展開。このうち緊急医療支援活動は56カ国・地域で計154件に及ぶ。グループには認定NPO法人のほか、AMDAインターナショナル、NPO法人AMDA社会開発機構(岡山市)、同AMDA国際医療情報センター(東京都、大阪市)、国際貢献大学校(新見市)などを運営するアムダ国際福祉事業団がある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年01月20日 更新)

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