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ミニカー装飾2号車で慰問の旅 総社の夫婦、難病の娘と

全国6000キロを縦断したミニカー装飾のローバーミニ(右)と2号車になる予定のトヨタ・セラ

FOPと闘う妹尾ひよりちゃん

2号車用に託されたミニカーの一部

 難病や障がいがある子どもも、この車と同じようにみんな大切なオンリーワン―。全身の筋肉などが硬い骨に変わっていく進行性骨化性線維異形成症(FOP)の長女ひよりちゃん(4)と共に暮らす妹尾鉄雄さん(46)、綾子さん(36)夫婦=総社市=が数千台のミニカーを飾り付けた「世界に1台だけの車」の2号車製作を目指している。完成後、全国の難病や障がいのある子どもたちを訪ねる旅に再び出発する。

 ひよりちゃんを授かり、「物心ついて他人と見た目が違うことを尋ねられたら、どう答えればいいのか」と自問した鉄雄さん。板金塗装で車と関わる仕事から、「車も人間も千差万別。人それぞれみんな形が違っていいんだ」と、ミニカー装飾の車を思い付いた。

 仕事の関係者や、ひよりちゃんの成長をつづっているブログを通じて呼び掛け、子どもたちが使い古したさまざまなミニカーが5千台近く集まり、うち約4千台をローバーミニの小さなボディー一面に取り付けた。

 他の子どもたちにも見せて、触らせてやりたい―と、2011年に車検登録。ブログで知り合った心臓病や先天性疾患の子どもを持つ家族を中心に、秋田から熊本まで本州・九州を縦断して訪問した。昨年5月の埼玉への旅で走行距離は6千キロに達し、年代物のミニは引退を余儀なくされた。

 旅は終わりにするつもりだったが、出会った家族たちから「このミニカーも連れていって」と、次々に新たなミニカーを託された。「希望」「はなれていても心は1つ」などのメッセージが書き添えられたミニカーを見つめるうち、妹尾さん夫婦は「やめられない」と2号車製作を決意した。

 2号車用に、はね上げ式ドアが特徴のトヨタ・セラを入手。今度は5千台を目標に車内にもミニカーを取り付ける。「車いすや酸素ボンベを使っている子どもも、大きく開くドアから乗り込んで触ってもらいたい」と鉄雄さんは願う。

 外出を控えているFOP患者の家族もいるが、夫婦は「外に出ることが宝物になる」と、可能な限りひよりちゃんも旅に連れていく。「訪ねた家族は、病気は違ってもみんな明るくて強い。自分たちだけじゃないと元気をもらっている」と綾子さんは言う。

 2号車用のミニカーはすでに2千台以上集まっているが、さらに寄付を募っている。mini98_14@yahoo.co.jpへメール連絡した上で送付を。

 進行性骨化性線維異形成症(FOP) 全身の筋肉や周囲の腱(けん)、靱帯(じんたい)などが再生する際、激痛を伴いながら骨化し、関節が固まったり、変形して次第に動けなくなる難病。手術で除去することは困難。患者は200万人に1人とされ、2007年に難治性疾患克服研究事業の対象に指定された。遺伝子の変異が原因となっていることが分かり、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用した治療薬の研究が進められている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年01月26日 更新)

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