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大学や病院との連携模索 メディカルネット岡山

川崎医科大付属病院で開いた展示会。手前が共同受注した脊椎骨折用の手術台

 岡山県内の金型、産業機械メーカーなどでつくる医療機器の共同受注グループ「メディカルネット岡山」(21社)が大学や病院との連携を模索している。発足から6年半。大手メーカーからの部品受注を目指してきたものの、受注は1件にとどまる。下請けではなく、自らニーズを掘り起こして製品開発から手掛けることで活路を開こうと、展示会などを通して医療現場とのパイプづくりを進めている。

 1月27〜31日、川崎医科大付属病院(倉敷市)で開かれたメディカルネット岡山の商品展示会。瑞穂医科工業(東京)に依頼された共同受注第1号である脊椎骨折用の手術台をはじめ、各社の手掛ける手術用器具などが並んだ。

 こうした展示会は初の試み。中原鉄工(岡山市)社長の中原成始郎・同ネット幹事は「会員の大半が金属や機械関連のため、これまで医療現場とは疎遠だった。これをきっかけに接点を増やしていきたい」と狙いを話す。
 
“ニッチ”狙う

 同ネットは2007年8月、医療機器を航空機や次世代自動車と並ぶ新産業育成の重点分野と位置付ける県の呼び掛けで発足。地場企業の精密加工技術を生かし、大手メーカーからMRI(磁気共鳴画像装置)といった高度医療機器の部品の共同受注を掲げた。

 島津製作所、日立メディコなどの大手を回り、関連の見本市に参加して技術を売り込んだものの、厳格な品質基準に加え、既存メーカーとの競争が激しい市場で苦戦。こうした中で受注した脊椎骨折用手術台が“方針転換”のきっかけとなった。

 可動式のパッドを採用することで手術台に載せたまま患者の背中の曲がり具合を調整でき、骨に医療用セメントを注入する治療を正確に施せる。高知大医学部付属病院から相談を受けていた瑞穂医科工業の開発担当者が09年、同ネットの勉強会を訪れた際に打診した。

 「手術や実験の器具といったニッチな分野に目をつければ市場に食い込めるという手応えをつかめた」と中原社長。この手術台は瑞穂医科工業が今春にも本格販売する計画だ。
 
会員拡充 

 同ネットでは医療現場のニーズをつかむため、岡山大を拠点に医療系ベンチャー育成を目指すNPO法人「メディカルテクノおかやま」との情報交換を昨年6月から開始。3月には岡山大などが開く医療機器や先端研究の展示会「岡山メディカルイノベーション」にも参加する。

 開発できる機器の裾野を広げるため会員拡充にも取り組んでおり、インターネットを使った遠隔診療システムを開発したエヌディエス(岡山市)が昨年12月、がんの放射線治療に使われる3次元測定装置製造のイーアールディー(同)も今年1月にメンバーへ加わった。

 厚生労働省によると医療機器の国内市場規模は約2・4兆円に上る。協和ファインテック(同)社長の橋本明典・同ネット会長は「各社の技術向上など課題は多いが、医療水準の高い大学や病院が集まる岡山の地の利を生かし、活動を軌道に乗せたい」と力を込める。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年02月19日 更新)

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