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(1)不整脈とは 岡山ハートクリニック理事長 日名一誠

ひな・かずよし 総社高、三重大医学部卒。岡山大第一内科で研修後、カテーテルアブレーションに取り組む。心臓病センター榊原病院副院長などを経て2009年3月から岡山ハートクリニック院長、12年から理事長。

 岡山ハートクリニック(岡山市中区竹田)は岡北大橋の東たもとにあります。19床の小さな有床クリニックですが、医師は7名で全員が循環器の専門医です。カテーテル治療を得意としており、なかでも不整脈をカテーテルで治療するカテーテルアブレーション(心筋焼灼(しょうしゃく)術)では、全国トップクラスの症例数を誇っています。今回から5話で、不整脈の仕組みや私どもが取り組んでいる最新の治療などについて書いていきたいと思います。初回は不整脈について説明します。

 心臓は全身に血液を送るため一定のリズムで収縮を繰り返しています。この拍動を司(つかさど)っているのが、右心房にある洞結節と呼ばれる部分です=図1参照。ここからの電気信号が、決まった流れ道(正常伝導路)を通って、心房→心室と順序良く伝わって一定のリズムで心臓を打たせているのです。このリズムが突然に乱れ、速くなったり遅くなったりするのが“不整脈”です。不整脈にはいくつかのタイプがあり、治療の必要の無いものから命にかかわるものまでさまざまです。それぞれに対処法が異なりますので、まずは専門医で適切な診断を受けることが大切です。

不整脈のタイプ

 不整脈は大きく分けて、(1)期外収縮(2)脈が速くなる頻脈性不整脈(3)脈が遅くなる徐脈性不整脈―に分類されます。

(1)期外収縮

 心臓のリズムを司っている洞結節以外の部位から、洞結節よりも早いタイミングで電気信号が出ることにより生じます。心臓はその早いタイミングの電気につられて拍動してしまいますので、敏感な人は「心臓が大きく打った、脈がとんだ」というように表現されます。自覚症状のない人も多いと言われます。通常は、治療を必要としない安全な不整脈ですが、時に狭心症、心筋梗塞の前ぶれのことがありますので、一度は心臓の器質的な病気がないことを確認しておきましょう。

 期外収縮単独であれば、体への影響はないので、気にせず生活するようにお話ししますが、どうしても気になって生活の質に関わるようなら、薬物療法やカテーテル治療を考えます。

(2)頻脈性不整脈

 拍動が急に速くなる不整脈です。種類によっては、脳梗塞や突然死の原因になったりします。また長く続けば、心臓が弱って心不全になったりします。症状は拍動の速さによって異なり、一般には「動悸(どうき)、胸苦しさ、揺れるような感じ」などと表現される方が多いです。拍動がさらに速くなると、心臓が空打ち状態になり、フーッとして脳虚血、失神、心停止に至ることもあります。

 カテーテル治療がもっとも進歩したのがこの頻脈性不整脈ですので、多くの場合でカテーテル治療での根治が期待できます。

(3)徐脈性不整脈

 拍動が遅くなったり、一時的に停止したりする不整脈です。拍動が少なくなると、心臓から送り出される血液の量が減少しますので「息切れ、だるさ」を訴える人が多いです。また心臓が4秒以上停止すると、めまい、失神の原因となり、転倒など2次的な事故につながることもあります。ペースメーカー治療が中心となります。

不整脈の診断

 不整脈のタイプを見分けるには、発作時の心電図を見ることが最も確実です。ただ通常の心電図検査では、非発作時のことが多く不整脈が記録されないため診断がつかずに自律神経とか更年期などと診断されているケースもよく目にします。最近では、24時間心電図などに加え、携帯型心電図など発作時の心電図をとらえるための装置が工夫され使用されています。

まとめ

 不整脈には心配のないものから、脳梗塞の原因になったり命にかかわるものまでさまざまなタイプがあり、それぞれに適切な対処法があります。最近ではカテーテル治療などの進歩も著しく、薬物を中止できる可能性もあります。まずは一度専門医を受診してみてください。

 ◇岡山ハートクリニック(岡山市中区竹田54の1、(電)086―271―8101)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年07月21日 更新)

タグ: 心臓・血管

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