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(5)痔瘻(じろう)の治療 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院副院長 嶋村廣視

嶋村廣視副院長

 痔瘻の治療の基本は手術です。大きく分けて、細菌の入り口(原発口)まで切り開いて感染巣を除去してしまう開放するやり方(開放術式)と瘻管だけを取り除くくり抜く方法(くり抜き法)の2種類があり、最近では瘻管の途中を縛るLIFT法などを試みている施設もあります。

 開放術式は切った傷は縫合せずに時間とともに肉が盛って、皮が張ってくるのを待ちます(二次癒合といいます)ので時間はかかりますが、痔瘻手術の基本です。すべて開放してしまえば再発率は低くなりますが、痔瘻のタイプにより括約筋などの大切な組織も犠牲にしないといけません。痔瘻手術の最大の問題点は肛門機能の温存と根治性の両立で、あまりに根治性を優先すると特に複雑な深部の痔瘻の場合、肛門機能にダメージを与えてしまいますので両方のバランスが取れた手術をすることが肝要です。また、大きな傷だと治癒するまでに2、3カ月かかることもありますので、根治性に影響を与えない部分は一部縫合したり、掻爬(そうは)のみとすることもあります。

 くり抜き法は理論的には一番よいのですが、くり抜いた後へ再度感染を起こすことがあり、これが再発率の増加につながっています。深部の痔瘻は瘻管のみ切除することは困難ですので、掻爬と二次癒合しやすいように傷の形を整えるような手術になります。複雑な痔瘻で炎症の範囲が広い場合、軟らかい細いチューブを入れて炎症が治まるのを待ったり、炎症が強くてくり抜き法の適応ではないが括約筋を切りたくないときにはゴムを通して時間をかけて徐々に締めていくことで治癒させるシートン法を用いることもあります。

 それぞれ病態に応じて術式を決め、複雑な場合はそれらを組み合わせてデザインを決定します。また、クローン病などで根治性が低い場合や、根治手術による機能障害が著しい場合は前述のシートン法や切開排膿(はいのう)のみで経過をみる場合もあります。

 メリットとデメリットを考慮しどういった治療が望ましいか、患者さんとご相談の上で決めてまいります。

◇ チクバ外科・胃腸科・肛門科病院((電)086―485―1755)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年08月18日 更新)

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