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母親の肺下葉、分割して移植 岡山大病院が世界初成功

岡山大病院で行われた生体肺区域移植手術=8月31日午後4時20分(岡山大病院提供)

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は24日、重い肺の病気に苦しむ2歳9カ月の男児=埼玉県在住=に、母親の肺下部(下葉)を分割して両肺に移す「生体肺区域移植手術」に成功したと発表した。病院によると、肺として機能する最小単位の「区域」に分割し、移植する手術は世界初。男児は国内最年少の肺移植患者で、容体は安定しており、10月下旬ごろには退院できる見込み。

 2010年の改正臓器移植法全面施行で15歳未満も脳死臓器提供が可能となったが、乳幼児への脳死肺移植のチャンスは極めて限られている。生体肺移植でも成人からの提供ではサイズが合わなかった。今回の手法は治療の選択肢を大きく広げるものと期待される。

 手術は8月31日、呼吸器外科の大藤剛宏肺移植チーフを執刀医とするチーム30人が担当し、約11時間かけて行った。今月13日には人工呼吸器を外し、22日には酸素吸入器も使わなくなるなど順調に回復している。

 肺組織は、右肺は上葉、中葉、下葉、左肺は上葉、下葉に分かれている。生体肺移植は通常、肺活量が最も多い、左右いずれかの下葉を使うが、男児には大きすぎるため、母親の左肺の下葉を区域に切り分けて移植した。

 区域は一見して境界はないが、細かな血管や気管支などが複雑に張り巡らされている。移植しても機能するよう傷つけずに血管や気管支を切り分け、吻合(ふんごう)するには高度な技術が求められる。大藤チーフは、約3年前から研究チームをつくり、動物実験を繰り返すなど準備を進めてきた。13年7月には、当時として最年少となる3歳の男児に母親の中葉部分を移す生体肺移植も成功させている。

 大藤チーフは「今回は中葉移植の時よりさらに小さな肺が必要で、区域移植しか救命の道はなかった。新しい術法の確立は、より多くの子どもや家族に希望を与える成果だ」と話している。

 男児は今年5月、肺が硬くなり縮んで動かなくなる特発性間質性肺炎を発症。8月中旬には人工呼吸器を装着しても酸欠になるなど状態は急激に悪化していた。母親は「再び息子の笑顔が見られた。言葉では言い尽くせないほど感謝の気持ちでいっぱい」とのコメントを寄せた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年09月25日 更新)

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