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高次脳機能障害、理解して 高松の医師・山田さん  岡山で体験基に講演「本人の意思尊重を」

自身の体験をもとに高次脳機能障害を分かりやすく説明する山田さん(左)

 事故などによる脳外傷で記憶や認知に後遺症がある高次脳機能障害。障害の当事者で医師でもある山田規畝子(きくこ)さん(高松市)の講演会「壊れた脳 生存する知」(痴呆(ちほう)を生きる私たちの会、河口医院主催)が七月初め、岡山県早島町で開かれた。山田さんは、自身のさまざまな体験を客観的に紹介し、障害への理解を求めた。

 靴のつま先とかかとを逆にはこうとする。和式の便器に足をつっこむ。トイレの流し方が分からない―。山田さんが日常生活で困難をきたし始めたのは三十四歳の時。大学時代から繰り返した脳出血の影響だった。

 右脳、特に頭頂葉に大きなダメージを受けた山田さんは、記憶を失ったり、形の認識が難しいため物の位置関係が理解しにくいといった後遺症に悩まされた。医師として経験を重ねていた山田さんだが、自分の身に何が起きたのか見当がつかなかった。

 初めて高次脳機能障害という言葉を聞いた大学病院では「余生は趣味のことでもされて、のんびり暮らされたらどうですか」と医師に言われた。自身まだ若く、子どもは三歳だっただけにショックも大きかったという。

 その後、高次脳機能障害の研究者らとの出会いで「自分がすることは全部病気のせいだと分かり、自分を責めたり落ち込むことが少なくなった」と山田さん。一人息子の真規(まさのり)君の「病気になってもお母ちゃんは変わらない」という言葉にも支えられた。

 脳の障害と一口に言っても「症状の現れ方は人それぞれで異なるし、同じ人でも一日一日で変化するくらい多様。健常者の物差しを当てはめないでほしい」と山田さん。

 見た目には分かりにくく、はたから見ると怠けているように見えたり、失礼な行動をとったりすることもあるが、本人にしか分からない苦しみがある。できないことを責めるのではなく、例えばパチンコやマージャンなどでも本人の好きなことを尊重するのが立ち直りには近道だという。

 講演の大半は代読で行われたが、最後に山田さんは自分の言葉で、障害を負っても人間の本質は変わらないことを強調。「脳はどんな状態になっても、生命の維持や人間性、人格といった一番大事なものを優先的に残し、生きていこうとする。脳のそういう強い意思を病気になって実感しています」と締めくくった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年07月18日 更新)

タグ: 健康女性福祉

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