文字 

(2)地域における医師の役割 新見市国民健康保険湯川診療所・渡辺病院内科 藤井修一

ふじい・しゅういち 井原高、自治医大卒。鏡野町国保病院、上斎原診療所、川崎医大脳卒中科を経て2012年から現職。総合内科専門医、脳卒中専門医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医。

 

 今回は、地域における医師の役割について考えてみたいと思います。

 大病院では最先端の高度な医療機器による検査や難しい手術を行うというイメージがあると思います。それに比べると、地域における医師が実際にどんなことをしているのか、イメージしにくいのではないでしょうか。

 地域における医師の役割は、三つあると私は考えています。それは、(1)日常よく遭遇する病気や健康問題の大部分を適切に診療する(2)予防医療(健診や予防接種など)や健康増進を行う(3)医療・福祉・保健の連携を行う―ということです。

 は1000人の住民が1カ月にどのくらい医療を受けるかを観察した研究結果です。307人が医療機関を受診し、うち88人が病院の外来、大学病院に入院が必要だったのは0・3人でした。これは、多くの健康問題、例えば風邪や腹痛などは地域の医療機関で解決が可能ということを示しています。まずは地域の医師が診察を行い多くの場合は治療可能であるし、必要に応じて大病院の適切な診療科へ紹介するという方法が、適切で効率がよいことがデータからもわかります。

 高血圧や糖尿病で治療している場合、その疾患のみを治療していても、がんや他の病気を見逃されてしまうことがあります。健診をすすめ生活習慣の改善を促すことは、その患者さんの経過や性格をよく知っている地域の医師だからこそできることです。大病院ではある疾患のみに集中した治療を行い、地域の医療機関ではその医療情報を整理し、全身に配慮した医療を行っていきます。

 前回でも触れた通り、医療・福祉・保健の連携を行うことが、ますます重要になっています。例えば脳梗塞で麻痺(まひ)が残ってしまった場合、まずは麻痺の程度や全身の状態を医師は判断します。自宅改修やリハビリが必要であれば、ケアマネジャーらに相談し、計画をしてもらいます。依頼だけではなく、逆にヘルパーさんなどケアを実際に行っている人から、飲み込みが悪いことや床ずれができやすいなどの情報を得ることもあります。そういった関係性を良好に保つことが、その地域の医療や介護のケアを向上させることにつながります。

 地域で仕事をしていて、最も大切なのは「対話」だと思うようになりました。コミュニケーション能力ともいえます。診察室での患者さんとの対話。大病院の専門医との対話。診療所での看護師たち職員との対話。行政との対話。地区民運動会での住民との対話。そういったいろいろな人や場面での対話を通して、現状や問題点、課題を認識することができ、それを克服する方法も一緒に考えることができます。

 自分ひとりで考えていても地域に必要なことは全然わかりませんでした。やはり、その地域のことはその地域に住む人に聞くことが最も大切だとわかりました。対話を通して、その人や地域に最も適合した医療を行っていきたいと思っています。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年12月01日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ