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(11)肛門部悪性疾患 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院 木下真一郎

木下真一郎医師

 肛門部の病気は、良性疾患がほとんどであるが、まれに、肛門や肛門皮膚に悪性疾患を認めることがある。肛門部悪性腫瘍で最も多くみられるのは肛門管がんであるが、その他にも痔瘻(じろう)がん、Paget病などがある。

肛門管がん

 直腸肛門管に発生するがんの2~5%を占めており、肛門の入り口から約3センチにわたる管状の部分(肛門管)に生じるがんを総称して、肛門管がんという。

 症状は、かゆみ・出血・疼痛・粘液分泌・便通異常などであり、肛門管やその周辺に硬いしこりのある潰瘍ができ、肛門が狭くなることもある。

 治療には、局所切除や直腸切断・人工肛門造設術などの外科的切除や、抗がん薬と併用した放射線療法などがある。現在は抗がん薬を併用した放射線療法で肛門を残す治療が推奨されている。

痔瘻がん

 腫れを繰り返して、膿(うみ)が出続ける複雑な痔瘻を長期間放置、または再然を繰り返していると、まれにがん化することがある。

 症状は、痔瘻の痛みが増してきたり、便が出にくい狭窄症状やゼリー状の分泌物が出現したりする。

 治療は、直腸切断・人工肛門造設術を行う。

Paget病

 Paget細胞というがん細胞が表皮に広がって、さまざまな皮膚の異常、かゆみや痛みを伴う皮膚の悪性腫瘍です。皮膚の表皮にPaget細胞が発生し、広がっていったもので、ほかの臓器のがんを合併することがある。

 皮膚病変は平らな赤い斑点としてみられ、ところどころ白く抜けたり、薄茶色になったりする。少し進行すると一部がただれ、浸出液の出現や、かさぶたのようなものが付着するようになる。軽い痒(かゆ)みを伴うこともあり、腫瘍というよりも、湿疹やタムシと思われ、長い間放置されることもあるため、肛門周囲の湿疹との鑑別が必要である。

 治療は、広範囲の局所切除が必要であり、肛門管内まで広がっている場合は、直腸切断術が必要となることもある。

     ◇

 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院((電)086―485―1755)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年01月19日 更新)

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