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サルナシに発がん抑制効果 新庄ブランド化で岡山大確認

人気が高まっているサルナシの収穫作業=2014年9月

 新庄村特産のサルナシの人気が高まっている。岡山大による動物実験で発がん抑制効果が認められ、注目度がアップ。加工・販売に取り組む「村サルナシ栽培研究会」(建部始正会長)は買い取り価格を引き上げ、それに伴い生産者は増えた。高い健康効果が確認された村の自生種を「新庄の幸(さち)」と命名し、ブランド化にも乗り出している。

 新庄村は健康への好影響をアピールする狙いで2010年、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の有元佐賀恵准教授(遺伝毒性学)に成分研究を依頼。これまでに皮膚がん、肺がんの抑制をはじめ炎症の予防など多彩な健康効果がマウスやラットの実験で確認された。

 ■酢やジャム

 効果の一つで、遺伝子に悪影響を及ぼす作用を抑える抗遺伝毒性は、熱を加えると失われると報告された。このため栽培研究会は、熱処理しない加工品としてサルナシ酢を13年に開発。道の駅メルヘンの里新庄で売り出し、同年の製造分を完売した。

 道の駅では14年の生食用約150キロも完売し、ジャム、リキュールも一時は商品がなくなる人気ぶり。佐藤毅支配人は「メディアで健康効果が紹介され、注目度は飛躍的に高まっている。もち米・ヒメノモチに続く村の名産品になれる」と期待する。

 好調な売れ行きを受け、栽培研究会は買い取り価格を引き上げた。14年から生食用を1キロ当たり1100円(前年比500円増)、加工用も13年から200円程度上げて350~500円とした。

 ■付加価値に注目

 岡山大は、中心メンバーの芦川巌さん(72)が25年前に村内で採取して育てた自生種と、村外由来の2種の計3種を比較。抗遺伝毒性の効果は自生種が最も高いとの結果が出た。

 栽培研究会は付加価値に着目し、芦川さんの畑由来の種類を「新庄の幸」と命名。14年から他の種類と分けて集荷し、サルナシ酢の特別版約110リットルを仕込んだところ、県内外の17人から注文があり完売したという。

 ■生産量確保が課題

 課題は生産量の確保。08年には収量が約3トンあったが、天候不順や霜の影響を受けやすいため近年は年間200~500キロにとどまっている。価格上昇もあって14年は前年より2戸多い17戸が約1・1ヘクタールで栽培し、ノウハウの確立も進んで約700キロまで増えた。

 このうち新庄の幸は5戸が計10本を栽培するのみで、出荷量全体の約7%にすぎない。栽培研究会は同種に集約していく方針で、栽培法や収益性をまとめたちらしを作製。会員対象に苗木購入の補助制度も創設し、新たに4戸が育て始めた。

 芦川さんは「研究成果もあり、将来性は十分。安定した収入が得られるようブランド力を高めていきたい」と話している。

サルナシ マタタビ科でキウイの原種とされ、山岳地帯に自生する。果実は長さ2~3センチの緑色。ビタミンCが豊富で、滋養強壮効果などがあるという。新庄村は古くから自生地があり、転作作物として2002年から栽培を奨励。実は日持ちしないため、主にジャムやリキュールに加工、販売している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年01月23日 更新)

タグ: 健康

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