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小規模多機能型の居宅介護施設 伸び悩む設置数 岡山11 広島8 香川3

小規模多機能型の施設でデイサービスを利用する高齢者=岡山市内

 四月から大幅に見直された介護保険制度の目玉となる「小規模多機能型居宅介護事業所」の設置が、岡山、広島、香川県で進んでいない。岡山県は二〇〇六年度中に四十七カ所の設置を目指すが、九月一日現在で設置数は十一カ所。広島県は八カ所、香川県も三カ所にとどまっている。

 小規模多機能型居宅介護事業所は、デイサービスを中心に、利用者の状況に応じてショートステイやホームヘルプなどのサービスを総合的に二十四時間利用できる新しい施設。定員を二十五人以内とし、きめ細かいサービスを提供することで、中・重度になっても在宅での生活を継続できるようにする狙い。

 利用者は、月額単位の定額料金(要介護1は一万千四百三十円、要介護5は二万八千百二十円など)を自己負担すれば、提供されるサービスを利用できる。

 改正介護保険法では各市町村が許可権限を持ち、日常生活圏域ごとに必要数を定めて整備するとしている。市町村計画をもとにした岡山県の本年度目標は四十七カ所、〇八年度までには全二十九市町村の百三十七圏域へ一カ所ずつ開設するとしている。

 しかし、事業者の参入は進まず、現在は、岡山市五カ所、倉敷市四カ所、美作市と鏡野町が一カ所ずつの計十一カ所にとどまる。県長寿社会対策課は「周知不足から出だしは低調だが、九月以降に十カ所程度の設置計画がある。市町村との連携を強めたい」とするが、現状では目標達成は容易ではない。

 香川県も、〇八年度までに十七市町に六十五カ所ある日常生活圏域に一カ所ずつの開設を目指すが、高松市に二カ所、坂出市に一カ所だけ。県長寿社会対策課は「立ち上がったばかりなので、現時点での開設数にはこだわっていない」と、しばらく静観する構えだ。

 八カ所にとどまる広島県は、施設数でなく定員数で整備目標を立てる。全二十三市町のうち二十市町で計二千四百八人分の施設開設を目指しており、現時点では福山市六カ所(計九十人)、庄原市一カ所(二十五人)、熊野町一カ所(十二人)。県介護保険指導室は「今後は増えると推測している。県としても普及に努めたい」としている。


利用者確保が課題 事業者、参入に二の足

 介護が必要な高齢者を在宅のまま二十四時間体制で見守る「小規模多機能型居宅介護事業所」。施設介護を抑えて自立促進を促すことで、膨らみ続ける介護費用抑制を目指す今回の制度見直しの目玉の一つとして位置付けられるが、国の思惑通りには設置数が伸びていないのが現状だ。

 最大の課題は利用者の確保になる。五月に開設した「片岡デイサービス憩いの森」(美作市土居)は、二十五人の定員に対し、十四人の利用にとどまる。片岡晴美施設長は「制度自体を知らない人が多いうえに、知っていてもサービス内容が理解されていない」。このままでは運営が立ち行かない可能性さえあるという。利用者確保の難しさが、事業者が新規参入に二の足を踏む要因とする指摘は多い。

 制度の不備を指摘する声もある。小規模ホームを利用すると、それまで利用していた施設が使えなくなることや、ケアマネジャーもホーム専属の担当者に変わらなければならない。四月に開設した「香々庵小規模多機能ホーム」(岡山市東古松)の吉田博行代表管理者は、こうした点が「利用者や家族の不安を募らせている原因になっている」と分析する。

 介護保険に詳しい岡山県立大の香川幸次郎教授(高齢者保健福祉学)は、こうした要因に加え、「許可権限を持つ市町村が地域包括支援センター開設などで手いっぱいで、小規模多機能型居宅介護事業所にまで対応しきれていないのでは」と推測。「サポート役として県が力を発揮すべきだ」と提言している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年09月05日 更新)

タグ: 介護高齢者福祉

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