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医学・医療用イラスト人材育成へ 川崎医福大拠点に学会設立

学生にメディカルイラストレーションを指導する佐久間特任教授(右)

佐久間特任教授が描いた手術記録のメディカルイラストレーション

 医学的な専門知識を持って書籍や論文の挿絵を描く「メディカルイラストレーション」。手術方法や研究成果を正しく伝える表現として欧米の医療界で広く認知される一方、国内では十分に浸透しておらず、全国唯一の教育機関である川崎医療福祉大(倉敷市松島)が拠点となり、本年度中の学会設立を目指している。

 メディカルイラストレーションは、医学的知識とデザイン技術の両方を兼ね備え、医学・医療用のイラストを描くこと。国内には「メディカルイラストレーター」と呼ばれる専門家が20人ほどいるとされるが、ほとんどが独学という。

 同大は2011年、医療福祉デザイン科に、時事漫画家から医療界へ入り、40年近く第一線で活躍するレオン佐久間氏(66)を特任教授として招へい。川崎医科大と連携して解剖、病理学、臨床実習といった基礎医学を学んだ上で、デザイン技術を身に付ける教育システムを構築し、指導者の育成に力を入れている。

 「医学イラストの中には知識が不十分なために間違った表現がしばしば見受けられる」と佐久間特任教授。

 佐久間特任教授が日本臨床外科学会で昨年初めて講演するなど、メディカルイラストレーションは認知度が徐々に高まりつつあり、人材育成を目的に「日本メディカルイラストレーション学会」(仮称)の設立を計画した。第1弾として今月17日から佐賀大美術館で大規模な展示会を行っており、岡山での巡回展も予定している。

 佐久間教授は「メディカルイラストレーションは医学情報の“可視化”につながる。岡山を人材育成の拠点としたい」と話している。

端的に分かりやすく 絵で医療に貢献

 メディカルイラストレーションは、焦点を当てたい所を強調し、目立たせたくない箇所を省略して表現するのが特徴だ。写真や標本と異なり、必要な要素を抽出して描くことで端的に分かりやすく伝えられるメリットがある。

 描くのは人体の構造や骨格、臓器、手術の技法から、神経、細胞組織までさまざま。論文を読み解き、表現対象の意味を理解した上でのリアルな表現力が求められる。鉛筆による手描きが主流だが、近年はパソコンのコンピューターグラフィックス(CG)を駆使し、より美しく立体的に表現されるようになったという。

 メディカルイラストレーションについて川崎医療福祉大の横田ヒロミツ准教授(55)は「絵を描くことで医療に貢献できるのが最大の魅力。ただし、きれいなイラストでも、正確な表現でなければ意味がない」とし、人材育成に力を入れる考えだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年07月21日 更新)

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