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がん診療連携・都道府県拠点病院に指定の岡山大病院 谷本副病院長に聞く 施設間の格差を解消 治療内容登録し追跡調査

谷本光音教授

 厚生労働省が全国で整備を進める「がん診療連携拠点病院」で中核的役割を担う都道府県拠点病院に、岡山大病院(岡山市鹿田町)が八月末、指定された。県内のがん治療がどう変わり、患者にどんなメリットが生まれるのか、副病院長で院内の事業責任者である谷本光音教授(54)に聞いた。

 ―国ががん診療連携拠点病院の指定を進める理由は。

 「国立がんセンターや系列の各地方のがんセンター病院を核としたがん診療だけでは、がんのさまざまな症例に対応しきれないのが現状。全国どこでも質の高い医療が受けられるよう、厚労省が、がんセンターだけでなく、都道府県を中心とした診療拠点病院の充実を図るよう政策転換した。県内では、既に岡山済生会総合病院、岡山赤十字病院、倉敷中央病院、津山中央病院の四つが地域拠点病院に指定されているが、新たに岡山大病院が都道府県拠点病院に指定され、これらの中核を担うことになる」

 ―拠点病院としての役割は。

 「各学会の診療ガイドラインに準じた標準的な治療と、手術や抗がん剤、放射線治療などを組み合わせた集学的治療の推進で診療機能を充実させる。スタッフが充実した岡山大病院には、地域拠点病院から医師や看護師、薬剤師、放射線技師らを受け入れ研修。近く、五つの指定病院でがん診療拠点病院協議会を設立し、研修プログラムなどを話し合う予定だ」

 ―がん治療は、病院によって優劣があるといわれるが、治療成績(生存率)の公開が進んでいない。

 「施設間の格差解消を図るため、患者のがんの種類や治療内容を登録し、治療後の追跡調査をして生存率を比較するがん登録を充実させなくてはいけない。国立がんセンターが中心となり、がん登録の統一指標を検討している段階で、実現すれば、患者はもちろん、施設間の情報共有、医療の質の向上につながる」

 ―大学病院は巨大組織。患者に最適の治療を提供するため、診療科間の連携が重要だ。

 「医師個人の経験や特定の診療グループだけが治療方針を決めるのでは患者の信頼を得られない。約三十ある診療グループのスタッフが集まりがん診療が適切に進められているかを協議する場として、腫瘍(しゅよう)センターを十月一日に院内に立ち上げる。外来によるがん治療とがん登録の推進、医療従事者の研修受け入れという役割も担う」

 ―患者の痛みや不安を和らげる緩和ケアをどう図るか。

 「緩和医療の提供については、医師、看護師、薬剤師らでつくる緩和医療チームが既に院内で活動している。私たちは、心理面や宗教面からのアプローチと、治療によって痛みを止めるという闘う緩和を目指す。専門の緩和ケア病棟を持つ他の医療機関との連携も一層図っていく」

 ―抗がん剤治療の専門医の育成も求められる。

 「専門医は三種類以上のがんの診療経験を有することが認定の条件で、現在は院内には二人だけで、全国でも約五十人しかいない。長年、外科系ががん治療を担ってきたが、いろんな抗がん剤が開発されており、診療科すべてに、抗がん剤治療の専門医を配置するのが目標。それをサポートする看護師も育成していく」


ズーム

 がん診療連携拠点病院 全国どこでも同じ水準の治療を受けられるよう、国が2001年度から、全国に約370ある二次医療圏に1カ所程度の拠点病院の整備を進めてきた。今年2月から指定要件を見直し、各都道府県で中心的な役割を担う都道府県拠点病院を置くことを決め、大学病院の積極的な対応を求めている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年09月13日 更新)

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