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肩こり 我慢しないで 悩まず受診し検査を 思わぬ病気 原因の場合も

肩の痛みのリハビリは専門医(右)の指導を受けるのが効果的だ=岡山大病院

田中雅人講師

 肩こりは日本人にとって最もポピュラーな疾病の一つだ。とはいえ、生命の危険がないだけに、我慢して受診をためらっている人も多い。岡山大病院整形外科の田中雅人講師(42)は「肩こりには思わぬ病気が隠れていることもある。一人で悩まずに近くの医療機関を訪ねてほしい」と呼び掛けている。

 身体の不調に関する自覚症状を調べた厚生労働省の二〇〇一年国民生活基礎調査によると、肩こりは腰痛に次いで自覚症状が多く、男性は十七人に一人、女性は八人に一人が痛みを自覚している。

 「肩の筋肉は寝ているとき以外はほとんど使っているだけに、日常生活に支障を来すことが少なくない。患者の悩みは深刻」と田中講師。

 肩こりの原因はさまざまだ。一般的には、重い荷物を持ったりパソコンに向かっている時間が長かったりする人がかかりやすい。女性はなで肩や、生理不順が原因でも起きる。中高年なら、関節の炎症によるいわゆる五十肩が代表的だ。

 やっかいなのは、胃や十二指腸などの内臓疾患が隠れているケース。たとえば、胆石があれば必ず右肩に痛みが出るなど、手術が必要な場合もある。

 田中講師は「一~二週間湿布をしても痛みが引かなかったり、最初から激痛がある場合は、肩以外に何らかの原因が隠れていると考え、速やかに精密検査を受けてほしい」と話す。

 ちまたには肩こりや腰痛に関する民間療法があふれている。有効なものもあるが、中にはかえって症状を悪化させるものも少なくないという。一時的に気持ちがよくなっても症状が改善しているとは限らないので、民間療法に取り組む際は事前に医師に相談するのがよいだろう。

 田中講師によると、家庭で手軽に取り組める対策は、まずは入浴。ぬるめの湯に長くつかれば、痛みを和らげる効果がある。九〇度に腰を折り曲げた状態で、アイロンを痛い方の手で持って振り子のように動かす体操もリハビリによい。

 逆に、バイクや乗馬など、体の上下運動を伴うものや長時間の運転は禁物だ。

 肩や首、腰などの運動器は、加齢に伴って機能が衰えるため、程度の差はあれ、どんな人でもいつかは痛みを経験する。いったん完治しても、再発しやすいのが運動器の障害の特徴で、いかにQOL(生活の質)を向上させるか、患者自身の意識も大切だ。

 田中講師は「肩こりと腰痛は人間が立つことができるようになった代償として生じた病気といえる。悩んでいる人が多い割に特効薬がないのが現状だが、適切な治療とともに、日常生活にも気を付け、うまく病気と付き合ってほしい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年09月30日 更新)

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