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「全国がん登録」16年1月開始 岡山県医療推進課、則安課長に聞く

全国がん登録について語る則安俊昭・岡山県医療推進課長

 これまで都道府県単位で行ってきたがん登録を発展させ、がんと診断された人のデータを、国全体で集計・分析・管理する制度「全国がん登録」が2016年1月からスタートする。岡山県内の登録業務を所管する県医療推進課の則安俊昭課長に、制度の意義や従来の制度との違いについて聞いた。

 ―なぜこの制度が始まるのか。

 がんは国を挙げて対策に取り組まねばならない疾患であり、より的確な対策のためには、正確で詳細な情報が必要だ。これまでは都道府県ごとに「地域がん登録」という形式でデータを集めてきた。今回導入する全国がん登録は「がん登録推進法」に基づき、全国一律の方法で実施する。従来は収集するデータ内容にもばらつきがあったが、今回はがん発見の経緯や進行度、手術や化学療法といった治療の種類などを統一基準で集約する。さらに今回はこれまで不十分だった死亡情報も集める。客観的なデータに基づき、日本全体と都道府県ごとのがん罹患(りかん)状況をはじめ、どんな場合にどんな治療が選択されているかなどを詳細に分析できる。がん検診の効果も検証でき、対象年齢や頻度など、より効果的ながん検診の受診方法を検討することにもつながる。

 ―登録の仕組みは。

 登録を行うのは全ての病院と、希望する診療所。岡山県の場合、登録義務があるのは164病院。実施診療所は、参加申請に基づき、来年1月1日付で県が指定する。がん患者が受診すれば、病院や診療所は26項目の情報を都道府県の「がん登録室」に一定期間内に届け出ることになる。岡山県は岡山大病院に業務委託しており、一人の患者が複数病院から登録されている場合はこの段階で情報を整理。その上で国が管理する全国がん登録データベースに登録する。国段階でも重複情報などを整理する。患者の死亡情報は、市町村が国に直接提供し、データベースに反映させる。

 ―がん登録の歴史を教えてほしい。

 岡山県では1992年に「地域がん登録」を開始。行政や医師会、大学病院など関係機関が一致協力して推進してきた。登録率は非常に高い。しかし届け出は義務ではないため、すべてのがん患者の情報を網羅できるわけではなかった。また、都道府県ごとに登録状況の差が大きく、単純に他県との比較もしにくい。患者が他県の病院でも治療を受けた場合、両方の県で登録されるため、情報が重複し、一元化できなかった。また他県に転出すれば、個人情報の関係で追跡調査ができなかった。来年からはこれらの問題点が解消できる。

 ―がん登録については個人情報がデータベース化されることに対し、不安の声もある。

 がん登録推進法では、患者本人が登録を拒否できないとしている。その分、個人情報に触れる可能性がある担当者は限られ、守秘義務が課せられている。万一、情報を漏えいした場合は刑罰も定められている。これまでの地域がん登録でも個人データが漏れたとの情報はないので、安心してほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年12月07日 更新)

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