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広まるラジオ波治療 安井医長(岡山済生会総合病院)に聞く 肺がん切らず焼く 手術難しい患者に効果

電極針を手に肺がんのラジオ波治療を説明する安井医長

 肺がんを切らずに治すラジオ波治療が広まりつつある。胸に電極針を刺し電気の熱でがんを焼く方法で、手術に比べ体のダメージが少ない。手術を繰り返していたり、肺気腫などで肺機能が悪く手術が難しい患者らに行われている。最近3年間で延べ47人に行った岡山済生会総合病院(岡山市伊福町)の安井光太郎医長(放射線科)は「2センチ以下の腫瘍(しゅよう)なら8割を壊死(えし)させることができ、再発しても体の負担が軽いため繰り返し行える」と長所を語っている。


 ラジオ波治療は肝臓がんで既に普及。次いで肺がんで行われ、腎臓がんや骨腫瘍、乳がんなどでも試みられている。

 具体的には、ラジオ波発生装置とつないだ長さ十数センチ、直径二ミリ弱の細い電極針を、CT(コンピューター断層撮影)透視装置の画像を見ながら体外から肺の腫瘍に刺す。電気を流すと針の先端が六〇―一〇〇度の高熱になり、がんを凝固、壊死させる。

 安井医長によると、一個のがんを焼くのにかかるのは、わずか十数分。通常は局所麻酔で行える。肺の表面近くなど痛みが激しい場合は硬膜外麻酔や静脈麻酔を使う。

 肺がん治療は、悪性度の高い小細胞がんが抗がん剤による化学療法中心なのを除くと、手術が第一選択肢とされる。このため、ラジオ波治療は主に手術が難しい患者に行われている。さらに、治療効果を上げるためには腫瘍の大きさが二センチ以下で、数は片方の肺で三個、両方の肺でも五個までが望ましいという。

 安井医長は二〇〇一年六月から前任の岡山大病院(同市鹿田町)で始まった肺がんのラジオ波治療に携わり、岡山済生会総合病院に移った〇三年七月以降も同病院倫理委員会の承認を受け実施している。患者は六十、七十代が中心。肺の原発がんのほか、大腸がんや肝臓がんが肺に転移したケースも多い。化学療法と併用することもある。

 これまでに治療に伴う重い合併症はなかったが、肺から胸腔(くう)内に空気が漏れる気胸が四割の患者で起き、うち一割弱は処置が必要になった。

 新しい治療法のため、公的医療保険はまだ効かない。同病院の場合、四泊五日の通常の治療で患者の負担は三十万円程度。現在、このうち約十万円を済生会本部が患者に補助している。岡山大病院は国から先進医療の認定を受けており、治療費の一部に保険が適用される。

 安井医長は「長期成績はまだ分からないが、今のところ治療効果は上々。胸腔鏡手術と比べても体の負担が軽く、入院期間は短い。今後広まるだろう」とみている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年11月28日 更新)

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