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延命治療中止 「要望に応じる」6割  中四国医療関係者調査 施設の同意が条件

「延命治療の中止」が要望された場合、どうすべきか(グラフ)

 延命治療の中止など終末期医療について、医療関係者を対象にした意識調査の結果を、国立病院機構本部中国四国ブロック事務所(東広島市)の田中信一郎医療課長(岡山医療センター診療部長)がまとめた。約六割が本人や家族の要望があれば応じると回答。「脳死は人の死か」には「(そう)考えない」「分からない」が半数を超えた。

 富山県・射水市民病院で昨春、医師の独断による人工呼吸器外しが表面化。国が本年度をめどに指針作りを進めるなど、延命治療については現在、そのあり方が議論されている。

 調査は同機構が運営する中四国の二十三施設とハンセン病の三国立療養所で、医長ら一定以上の役職にある医師、看護師、技師、事務員計千六百七十五人に昨年九月実施。千四百二十八人から回答を得た(回答率85・2%)。

 回復不能の患者の家族から、延命治療の中止を要望された場合は「社会通念の範囲内で応じる」が32%で最多。「患者の意思を代弁していると感じれば応じる」(21%)、「要望にすべて応じる」(4%)など計62%が前向きに回答した。

 中止に必要な条件(複数回答)としては「施設全体で協議しコンセンサス(同意)を得ておく」(69%)、「施設の委員会の承認を得る」(55%)が多かった。

 延命治療の中止に該当する行為(同)は、「昇圧剤など生命維持に必要な薬剤の中止・減量」(68%)、「人工呼吸器、補助人工臓器の停止」(62%)などと続いた。また、「中止の選択肢を家族に示すのは義務か」では、80%が「はい」と答えた。

 一方、脳死が「人の死か」の問いでは、「分からない」(34%)と「そう考えない」(17%)が合わせて51%。「考える」(45%)を上回った。

 田中医師は「患者の自己決定権を前提とした上で、家族の気持ちも考慮する現場の姿勢が表れていると思う。脳死については、患者と接する時間の長い看護師に『分からない』が多く、心情的に人の死と結論づけにくいのでは」としている。


一人の判断危険

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の粟屋剛教授(生命倫理学)の話 だれが、どんなプロセスで決めるかは、延命治療の中止をめぐる大きなポイント。医師一人の倫理観や判断で行うのは危険であり、施設内や倫理委員会の合意を得る意識の高まりがうかがえる点は、特に興味深い。


ズーム

 延命治療中止 人工呼吸器や栄養補給など生命維持処置を含めたすべての治療を止めることで、毒物の投与などによる「積極的安楽死」と区別して「消極的安楽死」とも言われる。自然な死を望む患者が自分の意思で治療を拒否した場合を「尊厳死」と呼ぶ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年01月26日 更新)

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