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焦点 高齢者向け筋トレ機器、利用大幅に減 神石高原町 介護保険法改正 特定高齢者らに限定、健常者枠外に

介護予防のため筋トレに励む特定高齢者=神石高原町福永、神石老人福祉センター

 神石高原町の高齢者向け筋力トレーニング機器の利用が、昨年4月の介護保険法改正の余波で、要支援者や、将来介護の必要が出る恐れのある特定高齢者に絞られ、大幅に減っている。高齢化率が40%を超える地域で、元気な高齢者を増やそうといち早く取り入れたが、介護予防に重点を置いた法改正によって利用制限を余儀なくされるという皮肉な結果に。町内関係者から不満の声も出ている。

 腹筋や背筋、脚力を鍛える六種のマシンが並ぶ神石老人福祉センター(神石高原町福永)。特定高齢者向けの筋トレ(週二日、一回約三時間)で、七十―九十代の五人が運動に励んでいた。

 最年長の宮本許代さん(90)=同町古川=は「足腰の衰えを感じていたが今はつえが必要と思わなくなった。みんなに会えるのも楽しみで心のケアにもなる」と笑顔を見せる。


新町全域に拡大

 筋トレ設備は〇三年八月、旧豊松村が六百四十万円をかけて県内で初めて導入。合併後の〇五年度は他の旧三町にも計二千二百万円で整えられ、新町全域に拡大した。四教室はそれぞれ一年を三期(定員十八人)に分けて開催。対象は要介護度に関係なく六十歳以上を広く受け入れた。

 事業費千九百五十万円の約九割は国県の介護予防・地域支え合い事業の補助金。町の一般財源は百四十万円に抑え、利用者負担は一回四百円。〇五年度は定員を超える計二百二十九人が参加し、身体機能の維持などに成果を挙げた。


基準厳しすぎ…

 しかし、介護保険法改正に伴って同補助金は終了。筋トレを含む予防メニューは介護保険の枠組みに組み込まれ、「要支援1、2」を対象にした新予防給付と、保険財源も投入して特定高齢者ら向けに実施する地域支援事業に移行した。

 原則枠外に置かれた健常者らも特定高齢者に選定されれば予防メニューを利用できるが、特定高齢者を決める年一度の町の総合健診を受けたのは〇六年度、全高齢者の約三割の千四百七十二人。認定されたのは五十四人と全体の1・1%で、国の想定の5%を大きく割り込んだ。

 さらに、五十四人の中から最終的に筋トレが必要と判断されたのは神石五人と油木、三和地区各二人のわずか九人。他に先駆けて取り組んだ豊松地区は該当者が一人いたが辞退した。同地区で介護予防事業を提供する社会福祉法人紅輝会の山手公所長は「運動の効果が期待できる人は非該当者の中にもいるのに、認定基準が厳しすぎてこぼれ落ちている」と指摘する。


受診を呼び掛け

 県内全体でも特定高齢者は七百四十九人(昨年九月時点)。六十五歳以上人口の0・13%にすぎない。

 神石高原町内で要支援と認定され、通所系サービスを使う百二十三人の中に筋トレに取り組む人もいるが、〇五年度と比べて利用は多くない。

 町によると、筋トレ教室を町単独財源で開いたり、利用者負担を引き上げて対象者を広げるのは難しいという。指導員を置かずに機器利用を自由にすることはけがの心配もあってできず、「当面は健診の受診を呼び掛ける以外に手立てはなく、啓発やPRに努めたい」と町保健課の馬屋原康弘課長。

 厚生労働省は、介護予防という介護保険改正の趣旨に沿って、四月からの認定基準緩和の準備を進めており、町は成り行きを見守っている。

ズーム

 特定高齢者 将来要支援・要介護状態になる恐れのある高齢者。健康診査による医学的検査と心身の状態を問う基本チェックリストの回答を基に市町が選定する。地域包括支援センターが作るケアプランに基づき、運動機能向上(筋トレ)や栄養改善など、介護予防サービスを受けられる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年02月06日 更新)

タグ: 健康介護高齢者福祉

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