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重要性増す「遺伝カウンセラー」 日本学会学術集会大会長・山内泰子さんに聞く

遺伝カウンセリングの重要性を話す山内准教授

 胎児の染色体異常を調べる出生前診断や遺伝性がんの発症を予測する検査など遺伝子に関連した医療が急速に進歩する中、検査や治療の判断を手助けする「遺伝カウンセラー」の重要性が増している。不安を抱える人を支援する役割が高まる一方、認知度は十分とは言えない。3日から京都市である「日本遺伝カウンセリング学会」学術集会で大会長を務める川崎医療福祉大の山内(やまのうち)泰子准教授(遺伝カウンセリング)に役割や課題を聞いた。

 ―認定遺伝カウンセラーとは。

 遺伝に関わる問題に直面した人たちを支援する医療福祉の専門職。質の高い遺伝医療を提供するため、欠かせない存在だ。相談者に寄り添い、納得のいく選択を自分自身で決められるようサポートする。医療だけでなく、福祉領域の行政サービスや就学・就労相談窓口につなぐための情報提供もしている。

 ―具体的に、どのような相談があるか。

 「がん家系と言われた」「病気が子どもに遺伝しないか」「遺伝子の検査をした方がよいか」などさまざま。どの診療科も対象で、遺伝医療は特別ではない。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが2013年、遺伝性の乳がんを防ぐために乳房を切除したケースは、国内でも広く報道され記憶にあるだろう。その年4月に、妊婦の血液で胎児の染色体異常を調べる高精度の新検査が始まった際にも注目された。

 ―遺伝医療とは。

 大きく三つに分けて説明する。まず病気の確定診断。次に、命の選別につながる可能性のある出生前診断。検査を希望する場合、医師や認定遺伝カウンセラーによるカウンセリングを受けることが日本医学会などのガイドラインで示されている。三つ目は先ほどの家族性乳がんや卵巣がんの遺伝子検査で、予防や早期発見が可能だ。

 ―遺伝カウンセラーの認定制度は05年にスタート。15年12月現在、認定者は全国182人で、県内では4人。認知度を高める必要があると思う。どうすればなれるのか。

 まず大学院の修士課程で2年間学ぶ。その後専門の学会が行う試験に合格して資格を得る。養成カリキュラムのある大学院は川崎医福大など全国12校。人類遺伝学など基礎講義もあるが、最も時間を割くのが実習だ。臨床遺伝専門医と先輩カウンセラーらの振る舞いに接し、態度や考え方を身に付ける。

 ―どこで相談できるのか。

 岡山県内では川崎医科大病院、岡山大病院、倉敷中央病院に専門の外来がある。1回の面談は1時間程度。ただし、自由診療のため、費用は全額自己負担となる。認定遺伝カウンセラーは医師とは独立した立場で相談者と向き合っている。多くの人に遺伝に関する不安を相談できる窓口があることを知ってほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年04月02日 更新)

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