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(1)最大の危険因子はたばこ煙 岡山ろうさい病院呼吸器内科副部長 渊本康子

 COPDとは、Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患)の頭文字をとった名称です。COPDは、たばこ煙を主とする有害物質を長期に吸入ばく露することによって生じた肺の炎症性疾患と定義され、呼吸機能検査では正常に復することのない気流閉塞を示します。従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。

 肺気腫とは、たばこの煙や有害な物質を長期間にわたって吸い込むことで、肺胞の壁が徐々に壊れたり、肺胞壁が拡大したりして、次第に肺全体の機能が低下する病気です。慢性気管支炎は、気管支の表面にある粘液腺が肥大して粘液分泌が増加し、慢性的に気道が狭くなったり閉塞する病気です。

 たばこ煙はCOPDの最大の危険因子であり、COPD患者の約90%には喫煙歴があります。その他の原因としては大気中の汚染物質、小児期の呼吸器感染症などの外因性因子と遺伝素因(α―アンチトリプシン欠損症)の内因性因子とがあります。

 COPDによる全身性の影響(systemic effects)が併存症を誘発すると考えられます。COPDのsystemic effectsとして全身性炎症、栄養障害、骨格筋機能障害、心・血管疾患、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、抑うつ、糖尿病などがみられます。また、肺の合併症として喘息(ぜんそく)、肺がん、気腫合併肺線維症が挙げられます。特に肺がんのリスクは約5倍にも上昇するという報告もあります。

 厚生労働省発表によると、2014年のCOPDによる死亡順位は全体で10位となっています。男女ともに高齢者の割合が高く、COPDによる総死亡数は将来さらに増加する傾向にあると予測されています。

 COPDは、健康日本21(第2次)のなかで、循環器疾患、糖尿病と並び、主要な生活習慣病に位置づけられました。しかしながら、その認知度はまだ低い状態です。14年の厚生労働省患者調査によると、病院でCOPDと診断された患者数は、約26万人です。一方NICE study(Nippon COPD Epidemiology Study 2001年)の結果では、日本人のCOPD有病率は8・6%、40歳以上の約530万人、70歳以上では約210万人がCOPDに罹患していると考えられています。このなかで、正しく診断されて、適切な治療を受けている患者は10%にも達していないのが現状です。

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 岡山ろうさい病院(086―262―0131)

 ふちもと・やすこ 岡山県立朝日高校、高知医科大学卒。2011年より岡山ろうさい病院勤務。医学博士。日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年08月01日 更新)

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