文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 自閉症へ一貫支援訴え「パートナーシップ」広げて 米アルバマーレ市非営利組織代表ら 川崎医療福祉大で講演

自閉症へ一貫支援訴え「パートナーシップ」広げて 米アルバマーレ市非営利組織代表ら 川崎医療福祉大で講演

GHAの支援を説明するドーンさん(左)とジャネットさん(中央)。右は通訳の重松加代子さん

 周囲の理解や支援が得られなければ社会適応が難しい自閉症。米・ノースカロライナ州のアルバマーレ市は近年、日本でも広がっている支援プログラム「TEACCH(ティーチ)」を基に、グループホームや自閉症学級など、特化した支援に街全体で取り組む。その中核である非営利組織GHAの代表らが倉敷市松島の川崎医療福祉大で講演、地域で自立した生活を送るために必要な一貫した支援体制を訴えた。

 GHA理事長のドーン・アレンさんと心理部門理事のジャネット・バンクスさん、GHAを度々訪れ、二人を講演に招いた同大の佐々木正美教授が参加した。

 一九七八年に一つのグループホームから始まったGHAは、今では公立学校での自閉症学級の運営、職・住が一体化した農園運営など幅広く展開。人口一万七千人ほどの街に現在、十六の施設を持ち、五十五人がサービスを利用している。

 広範な取り組みの背景には、「環境」によって大きく左右される障害特性がある。

 自閉症は脳の障害により情報処理など認知能力が通常と異なると、TEACCHは考える。例えば、抽象的なものの理解が不得手なため、何かを伝える際は具体的に示し、伝える手段も言葉より絵や写真など視覚に訴える方が良い。食事、勉強など一日のスケジュールもきちんと組んだ方が安心して過ごせるという。

 「その人の特性に合わせた個別化支援が第一」とドーンさん。利用者別にサービスを組み立て、生活全般で一貫して提供する。例えば、グループホームは、障害の程度などで分かれ、教育はGHAが運営する教室、就労や余暇活動でも専門支援を受けられる。

 環境が悪ければ、パニックになって物を投げたり暴力を伴ったりすることもある。だが、GHAの職員の95%は女性。「どう対処しているのか」という質問も出た。

 ジャネットさんは「身体的な介入は最後の最後。予防が第一」と強調。パニックになっても注意を他に向ける▽「だめだ」という否定的な指示ではなく「○○しよう」という言い方にする▽部屋の物を固定したり、柔らかいスポンジボールを持たせる―といった工夫を挙げた。

 また、GHAの大きな特徴は、手厚い体制と地域とのつながりだ。

 五十五人の利用者に対し、職員は百五十人。年間の予算は約六億円に上る。その95%は障害者を対象にした政府の医療費や州の精神保健関連予算だという。

 職員の配置も手厚い。例えば通常のグループホームでは利用者六人に対し三人の職員がつき、三交代でかかわる。「一つのグループホームで十二人の職員が必要」とジャネットさんは説明する。

 手厚い体制のために、ドーンさんが強調したのは「パートナーシップ」を広げることだ。理事会には、親ら関係者だけでなく、銀行マンや弁護士、会計士など幅広い立場の地域のリーダーが参加。余暇活動で利用するスケート場、雇用先となる企業など連携も幅広い。

 「地域の中で果たす役割をアピールしている」とドーンさん。自身が商工会議所のメンバーであり、地元の実業界とも広く交流する。障害者への優れたサービスというだけでなく、地域の有力な雇用先であるといった面も強調しているという。

 関係者がうらやむような体制だが、「米国どこでもがそうではない」と佐々木教授は補足。「GHAは三十年かけて築いてきた。私たちも『なぜできないのか』と自らに問い、地域にどう応援を求めていくか考えなければならない」と訴えた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年05月22日 更新)

タグ: 福祉精神疾患

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ