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岡山大が心筋再生医療の治験開始 幹細胞を培養後、本人に戻す

岡山大病院で24日行われた女児の心臓手術。「心筋再生医療」に必要な組織も採取された(同病院提供)

 重い心臓病の子どもを対象にした「心筋再生医療」の臨床試験(治験)が24日、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で始まった。本人の心臓から心筋になる能力を持つ「幹細胞」を取り出して培養し、戻すことで心臓の機能を強化する。同大は、安全性と効果を確認した上で、世界初とされる実用化と2018年の保険適用を目指す。

 治験は、左心室が小さく、血液を送り出すポンプ機能が弱くなる「左心低形成症候群」の乳幼児(6歳以下)が対象。患者から採取した心臓組織から幹細胞を抽出し、名古屋市のベンチャー企業の施設で培養。1カ月後にカテーテル(細い管)を使い、心臓の冠動脈に注入して移植する。

 同病院新医療研究開発センターの王英正教授らのグループのほか、神奈川、静岡県内の2病院でも実施。合計で39人から組織を取り、幹細胞を移植する群と移植しない群に分けて比較データを集める。後者になっても治験終了後に移植できるよう準備する。

 24日は、治験に参加する生後10カ月の大庭あかりちゃん=兵庫県西宮市=に血流を改善する手術をしたのに合わせ、心臓組織の一部を採取した。

 心筋再生医療は、王教授らのグループが11年に臨床研究をスタート。これまでに子ども延べ41人を治療した。移植後1年でポンプ機能は平均7%向上し、その後の追跡調査でも細胞のがん化など副作用は確認されていないという。今年5月、治験に関する契約を企業と結んでいた。

 治験後の承認審査期間は、国の「先駆け審査指定制度」の対象になっているため、通常の約1年から半年程度に短縮される見込み。王教授は「将来保険が適用されれば、より多くの患者を救うことができる。他の心疾患にも応用できるよう研究を進めたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年08月24日 更新)

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