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コムスン問題 不正 論外だが… 人手不足は深刻 岡山県内の介護現場 景気回復 他業種へ 求職者5年で35%減

利用者宅を訪れたサルピス訪問介護事業所のヘルパー。「お年寄りが訪問を楽しみに待っていてくれるのが励み」と語る=岡山市

 訪問介護最大手コムスン(東京)が厚生労働省から受けた事業所指定の打ち切り処分。発端は、ホームヘルパーの数を多く偽るなど、指定を受ける際に虚偽の申請をしていたことだ。岡山県内の他の事業所は「不正は論外。介護への信頼も損なう」と憤る一方、「介護現場の人手が不足しているのは事実。景気回復で労働条件の良い他業種に人材が流れ、深刻になっている」と訴える。

 「二〇〇〇年に介護保険が始まった当時はヘルパーを募集すれば、五、六件は問い合わせがあり、面接まで進む人も何人かいた。今は問い合わせが一件あればいい程度。でも、選考は必要だし…」。岡山市原尾島、サルピス訪問介護事業所の松平康男所長(56)によると、特に応募が減ったのは、ここ二、三年のことだという。

 三百人もの高齢者を介護する同事業所のヘルパーは約百人。このうち常勤は一割で、大半がパートタイムの登録ヘルパー。四十、五十代の女性が多い。

 「利用申し込みは増えており、中でも食事時が多い。ただ、主婦は朝、夜が働きにくい。できるだけ多くヘルパーを確保しておくため、毎月求人を出している。それでも、ヘルパーの手当てがつかず、申し込みを断ることもある」と松平さん。

 国が在宅医療を推進する中、終末期など専門知識が必要な介護も増えている。「良いサービスを提供するには研修も必要。コストがかかる」。松平さんは苦しい事情を打ち明ける。

 人手不足は在宅介護サービスだけでなく、特別養護老人ホームなど施設でも同じ。福祉関連の仕事を求めて岡山、倉敷、津山市の福祉人材センター、バンクに登録した新規求職者は昨年度、三千百六十五人と最近五年間で35・8%減。これに対し求人は五千六百十五人と四・二倍に増えた。

 「景気回復の影響が大きい」と岡山県福祉人材センター(岡山市南方)の担当者。介護現場は不況時、就職難の受け皿となったが、今は「給与や福利厚生など待遇が他業種より厳しい」と、求職者に敬遠されるという。

 実際、仕事はきつい。介護労働安定センター(東京)の二〇〇五年度調査では、ヘルパーの半数が腰痛を抱え、コルセットを使う人も三割近い。重労働やストレスで、職を離れる介護職員は一年間で五人に一人に上る。

 「やりがいは感じるが、給与が見合わない」との声も多い。施設職員は月数回の夜勤をこなしても、手取りの月給が岡山県内で十五万~十七万円ほど。運営母体の小さいグループホームなどはさらに低いという。このため、男性職員は「家族を養えない」と結婚などを機に転職し、福祉系の専門学校、大学の卒業生は他業種に流れてしまう。

 また、登録ヘルパーは移動や待機時間分の給与が支払われないことが多く、実際の時給は千円程度とされる。

 給与アップが難しい要因は、国が介護の質の向上をうたう一方、給付費を抑えるため事業所への介護報酬を下げていることだ。訪問介護は、昨年の制度改正で要介護度の区分が細分化され、報酬の低い軽度の要介護者が増えた。ヘルパー八人で約二十人を訪問介護する岡山県内のある事業所の場合、赤字が年二百万円に上り、併設施設の収益で補っているという。

 団塊世代の高齢化などで介護需要は今後、さらに増すとみられる。しかし「国が言う通りにやっていたら事業所はつぶれてしまう」。事業所情報に詳しい岡山市のケアマネジャーは指摘する。

 「現場の努力はもう限界。待遇を改善し人材を確保するには介護報酬を上げるしかない。その分、事業所もヘルパーらの専門性を高める努力が求められる」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年06月20日 更新)

タグ: 介護高齢者

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