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増える小規模多機能ホーム 岡山県は29事業所 通い、泊まり、自宅訪問 1ヵ所で 

お茶を飲み談笑する「ぶどうの家」の利用者ら=倉敷市船穂町船穂

 通い(デイサービス)を中心に、泊まり(ショートステイ)、自宅への訪問(ホームヘルプ)も可能―。昨年春の介護保険制度改正で新設された小規模多機能ホームが増えている。市町村の指定を受けた事業所は1年間で岡山県21、広島県32、香川県9。2年目も開設が相次ぎ、岡山県は6月1日現在、29事業所に上った。それぞれを別の事業所に頼むより、臨機応変にサービスを受けられるというのが特長だ。

 昨年七月、デイサービスなどの事業所を小規模多機能ホームに切り替えた倉敷市船穂町船穂の「ぶどうの家」。昼過ぎ、二階建て民家をほぼそのまま使う施設を訪ねると、お年寄りが顔なじみのスタッフとお茶を飲み、ゆったり過ごしていた。

 利用登録は十五人。うちデイサービスに来るのは一日十人弱と、こぢんまりした雰囲気だ。四人まで施設に泊まれる。ホームヘルプの利用は一日三、四人という。

 利用者の大半に認知症の症状がある。毎日違う環境で過ごすのは混乱の元となり、はいかいなど問題行動を招くとされるだけに「すべてのサービスを一カ所で行い、なじみの関係を築くメリットは大きい」と代表の津田由起子さん(42)。

 事業所への介護報酬は在宅サービスで初めて、利用時間によらない月単位の定額制になった。津田さんは「以前はデイサービスの利用が六時間以上八時間未満などと決まっていたが、今は食事、入浴だけ来てもらうのも可能。利用者の生活をトータルで見て、柔軟に対応できる」と語る。

 ぶどうの家は一九九七年、高齢者の暮らしを支える「宅老所」として誕生。介護保険導入前から全国に広まっていた宅老所が小規模多機能ホームのモデルだ。ただ、利用者が他の事業所の介護保険サービスを使えなくなる制約などを嫌い、従来通りデイサービスと、保険外の泊まり、訪問で同様のサービスを行う宅老所もある。

 また、小規模多機能ホームの利用は自宅からの通いが原則だが、住まいを併設する事業所も出ている。

 岡山市野田の「ケアポート生き活(い)き館野田」はその一つ。昨年十月、三階建ての工場跡を改装し開業した。一、二階にデイサービスとショートステイの九室、三階に賃貸の居住スペース十一室がある。個室はトイレ付き約六畳。居住費は一日千八百五十円、食費は三食で千五百円。既に満室となっている。広さ、料金が同じショートステイの利用者も半数以上が長期の泊まりで、施設が事実上の住居になっている。

 要介護2の女性(97)は一人暮らしだったが、足腰が弱り居住スペースに入った。同市内の長女(72)は「夜、何かあったらというのが一番不安だったが、ここならスタッフが二十四時間いて安心」と胸をなで下ろす。

 「老後の住み替えニーズは多く、受け皿になっている」と、運営するNPO法人桃太郎ハンズの柏本行則理事長。同様の利用を想定し、同じグループの社会福祉法人も、譲り受けた倉敷市の雇用促進住宅に四月、小規模多機能ホームを開設した。

 ただ、小規模多機能ホームは「まだ試行錯誤の段階」(岡山市の事業所)。事業所の多くが利用者確保に苦労し、介護報酬の低さに不満も強い。同市内には指定を受けたものの、開業を見送った施設もある。

 ケアプランを内部でつくるため、外の目が入りにくい課題もある。「事業所の裁量で利用者の生活が左右されやすい」と、ぶどうの家の津田さん。事業所同士の情報交換などの場として三月、五施設で連絡会を発足させた。「交流、議論を通じ利用者や住民に信頼される介護を目指したい」と話している。


ズーム

 小規模多機能ホーム 1事業所25人までの利用登録制で、通いは1日15人、宿泊は9人まで。月額利用料(事業所への介護報酬の1割)は要介護度により4469円(要支援1)~2万8120円(要介護5)。他に食費やショートステイの滞在費がかかる。市町村が指定、監督する地域密着型サービスの一つで、利用は原則として市町村民に限られる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年06月23日 更新)

タグ: 介護高齢者

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