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のど集中冷却 新治療法考案 脳低温療法で岡山大

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の森田潔教授=麻酔・蘇生学=と武田吉正講師=同=らの研究グループは、重い脳障害を受けた患者の脳を冷やし神経細胞の回復を図る脳低温療法で、のどを集中的に冷やして迅速に脳温を下げる方法を考案、近く臨床に乗り出す。全身を冷却する従来の方法と併用することで、これまでよりも脳の損傷を抑制でき、救命率向上につながるという。

 脳低温療法は、水冷式の毛布で全身をくるんで脳温を下げて神経細胞の壊死(えし)を食い止める治療法。くも膜下出血や心疾患が原因で心肺停止となり、脳に血液が行き渡らなくなった蘇生(そせい)後脳症などに効果を発揮する。

 森田教授らが考案したのは、口から風船状のチューブ(塩化ビニール製)をのどに挿入し冷たい水を循環させ、心臓と脳を結ぶ動脈を直接冷やす方法。

 全身冷却の場合、目標脳温(約三四度)になるまで五、六時間かかるが、のどだけを冷やせば三十分程度で目標脳温に達し、脳の神経細胞を破壊する物質(グルタミン酸)の増加を抑制できることが動物実験で確認された。

 臨床では、のど冷却で目標脳温に達し次第、全身冷却に切り替える。

 脳低温療法は国内では一九九〇年代前半から普及。岡山大病院は年間五―十件行っている。

 武田講師は「脳損傷の治療は一分一秒を争い、いかに早く脳を冷やすかに成否がかかっている。症例を重ね、のど冷却を新治療法として確立させたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年06月28日 更新)

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