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(3)治療 岡山ろうさい病院呼吸器内科副部長 渊本康子

 安定期のCOPDの治療は、禁煙、インフルエンザワクチン接種、呼吸リハビリテーションといった非薬物療法と、長時間作用性気管支拡張薬を中心とした薬物療法です。

 1 禁煙 

 喫煙はCOPDの最大の危険因子です。喫煙は呼吸機能を低下させますが、禁煙は呼吸機能の低下を抑制し、死亡率を減少します。高齢になってから禁煙しても、疾患のリスクは大きく減少することが報告されています。

 2 ワクチン接種

 COPDでは感染症が重症化しやすく、また病状が急激に悪化する原因となることから、ワクチンの接種が重要とされています。ワクチンにはインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの2種類があります。インフルエンザワクチンは、COPD増悪による死亡率を約50%低下させることが報告されています。このためすべてのCOPD患者様にインフルエンザワクチンの接種が推奨されます。

 3 薬物療法

 気管支を拡げて呼吸を楽にする気管支拡張薬が薬物治療の中心となります。COPDの重症度に応じて、使用する薬剤の種類を増やしていきます。

 (1)気管支拡張薬 COPDの治療においては、喘息(ぜんそく)と異なり、吸入ステロイドよりも気管支拡張薬が第一選択と考えられます。気管支拡張薬では、抗コリン薬、β2刺激薬、テオフィリン製剤の3種類が使用されます。薬剤の投与経路は、作用と副作用のバランスから吸入が最も勧められます。抗コリン薬は副交感神経による気道のれん縮を抑制します。β2刺激薬は交感神経を刺激し、気管支を拡張させます。β2刺激薬は喘息治療でも多用されるように、末梢の気管支拡張作用が抗コリン薬よりも優れています。

 (2)ステロイド薬 中等度以上の気流閉塞(へいそく)を有し増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬を併用すると増悪頻度を減らし、生活の質(QOL)の悪化を抑制することが知られています。また長時間作用性β2刺激薬と吸入用ステロイドの配合薬も有用であることが証明されています。

 (3)喀痰(かくたん)調整薬 喀痰量の増加や喀出困難が認められる場合は、去痰薬も選択肢の1つとなります。喀痰が多いCOPD患者様では、経年的な閉塞性換気障害の進展が大きく、また増悪による入院回数も多いと報告されています。

 4 在宅酸素療法 

 慢性的に低酸素状態になった場合、在宅酸素療法の適応となります。自宅に酸素吸入器を設置し、鼻に通したチューブから酸素を吸入します。携帯できる酸素吸入機器もあるため症状によっては外出も可能です。

 5 リハビリテーション

 COPDが進行すると労作時の息切れのため、運動能力やQOLが低下します。このような状態を改善するためには薬物療法に加えて、運動療法や栄養療法、日常生活の管理などを総合的に行うことが重要です。

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 岡山ろうさい病院(086―262―0131)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年09月19日 更新)

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