文字 

現代医学関する展示物5千点 川崎医科大・博物館が35周年

開館35周年を迎えた川崎医科大現代医学教育博物館

森谷卓也氏

 川崎医科大現代医学教育博物館(倉敷市松島)が今年、開館35周年を迎えた。現代医学の教育と普及を狙いに、人体の臓器標本をはじめ病気の治療・予防法をまとめたパネルなど計約5千点を展示する全国でも珍しい施設。近年は、最新の視聴覚機器を取り入れた大規模なリニューアルを行っているほか、出前授業や親子向けイベントにも力を入れ、利用者拡大を図っている。

 現代医学教育博物館は、川崎医大の創立10周年記念事業として1981年5月に開館した。地下1階地上5階(展示エリアは2~4階)時計塔付きの延べ約7800平方メートル。

 同大創設者で医師の故川崎祐宣氏(04~96年)は、開館の趣旨説明で「百聞は一見に如(し)かず」と医学教育における博物館の意義を強調。建設に先立ち、欧米の先進的な医学博物館に教員を中心とした調査団を派遣し、念入りに準備を行った。

 一般の人にも医学の門戸を開きたい―との思いから、博物館2階は「健康教育博物館」と銘打ち、病気や体の仕組みを分かりやすく紹介。巨大な胃の模型(高さ約3メートル、幅約5メートル)でポリープやがんを視覚的に説明したり、臓器の配置をパズルゲームで学べるようにしたりしている。

 3、4階は医療関係者向けエリア。臓器標本の多さは圧巻で、2千点超が整然と棚に並ぶ。標本の情報はデータベース化され、端末を使えば臓器の種類や病名から、“図書館の本”のように目当ての標本を探し出せる。

 開館30年を記念して2010年から、2階展示室を順次リニューアルしている。これまで以上に病気の予防を重視し、生活習慣病になりにくい食事や運動のポイントなどをパネルや模型で解説。今年4月には、年代別にかかりやすい病気をタッチパネルの操作で学べる装置を導入した。

 一方、入館者数の伸び悩みは課題だ。1991年度の延べ2万3879人をピークに、緩やかに増減を繰り返し、2015年度は同1万7044人(いずれも2~4階の入館者の合計)だった。

 利用者拡大を狙いに数年前から、館外での活動を活発化。希望のあった県内小中高校で出前授業を行い、臓器の模型を使って体の仕組みなどを教えている。東京で毎年開かれている科学イベント「サイエンスアゴラ」(科学技術振興機構主催)への出展も続ける。

 09年からは毎夏、模擬の手術や救急処置を体験できる「かわさき夏の子ども体験教室」を企画し、毎回小中学生の親子200組が参加する人気イベントとなっている。

 川崎医科大現代医学教育博物館の開館時間は、午前9時~午後5時(土・日曜は同4時)。入館無料。休館日は祝日、12月29日~1月3日、6月1日。問い合わせは川崎学園(086―462―1111)。

  ◇

「運営への思い」 森谷副館長に聞く

 川崎医科大の教授で、現代医学教育博物館副館長の森谷卓也氏(56)=病理学=に、博物館運営への思いなどを聞いた。

 ―現代医学教育博物館のコンセプトは。

 新しい医学・医療の知識をリアルタイムに、正しく伝える博物館であることが社会的使命だと思っている。医療関係者以外にも来館してほしいので、展示物は気軽に見たり触ったりできる分かりやすさを追求している。

 ―開館当時との違いは。

 当時は病気の治療法に関する展示が多かったが、現在は「病気になる前に防ぐ」との考えを重視しており、感染症、脂質異常症、高血圧症などを予防する方法について力を入れて紹介している。

 ―今後の運営の抱負は。

 博物館を運営する学校法人・川崎学園(倉敷市松島)には、川崎医療福祉大や川崎医療短大などさまざまな教育機関があり、福祉や看護分野の専門家も多い。学園全体の「知」を結集し、医療福祉の現場をより反映した展示内容を目指したい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年10月05日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ